ということで…。
めちゃくちゃ痛かった鍼の洗礼に耐えた、自分へのご褒美は…。
この店だった。
内田治療院からは、わずか徒歩1分。激安惣菜で有名だった「あい菜家」*1の斜向かいにある店だ。
店の外見からして、レトロなムードを醸し出していたが、入口の扉を開けると、その印象はさらに強まった。
お世辞にも綺麗とは言えない、何とも、昭和なムード。
全ての席にテーブルに灰皿がおいてあって、「全席喫煙」という状況も、いかにも昭和だ。
先客はひとりしかおらず、僕は、少しだけ不安を感じたが、もう後戻りできない。
メニューも年季が入っている。
ただ、重要なのは、そこじゃない。餃子の有無だ。予めWebの情報で予習していた通り、餃子ラインナップは充実。
「焼餃子」の他に、「焼しそ餃子」「水餃子」「揚げ餃子」なども並んでいる。
ただ、僕の心は既に決まっていた。
ビールセットだ。
店頭にも同じ案内が掲げられていたので、僕は、入店前から「これにしよう!」と決めていたのである。
値段的には、ビールと餃子の単品価格を足した程度で、それに枝豆がつくので、お得。
まずは、ビールと枝豆が運ばれてきた。
枝豆は茹でたてで温かく、塩がしっかりふってあり、ビールにとてもよく合った。
枝豆と一緒に、お新香もついてきたのが好印象。これもなかなか美味しかった。
カラカラに乾いていた喉をビールで癒やしながら、店の奥をつらつらと眺めていると、おかみさんが黙々と餃子を包んでいた。
こういう情景は、いつ見ても楽しい。
途中、できあがった生餃子1人前を、店頭のお持ち帰りコーナー*2に運んでいったので、生餃子の注文が入ったのかな?と思っていたのだけれど、そうではなかった。
ほどなくすると、そのスペースから僕の焼餃子が運ばれてきたからである。
どうやら、炒め物や麺類などは、厨房でご主人が作るようだが、餃子だけは、店頭でおかみさんが焼くシステムになっているようだ。
ということで…。
焼餃子キターーっ!
いついかなる時、どんな店に入っても、この瞬間、僕はワクワクする。特に、初めて訪問した店では尚更だ。
iPhone SEはサイズ比較用。餃子としては、ごくオーソドックスなサイズ。
少し「よく焼き」*3に近いが、このぐらい、こんがりしっかり焼けている方が、僕の好みだ。
こんがりとした焼き目。いかにも弾力がありそうな皮。
心躍る瞬間だ。
囓ってみた。
皮は、その見た目通り、弾力があって味わい深い。もちもち感、カリカリ感をともに有している。
具は、肉、ニラ、キャベツを中心とした、ごくオーソドックスなもの。どちらかと言えば肉寄りだが、淡泊。
下味が殆ど付いていないので、オーソドックスに酢醤油で食べる餃子だ。
せっかく肉系の餃子なのに、NJC(略語の意味はこちらを参照。)でないのはちょっと残念だったが、肉の旨味は感じられた。
いわゆる、一口食べて「めちゃめちゃ美味しい!」と思うような餃子ではなかったが、何個か食べ進むうち、僕は、この餃子の魅力に気がついた。
これはきっと、昭和の家庭の手作り餃子なのだ。
家族で食べるものだから、細かい下味とかは気にせず(好みの調味料に任せ)量産。シンプルな味わいなので、飽きずに、沢山の量を食べることができる。
きっと、そんなタイプの餃子なのだ。
…と、これは勝手な僕の妄想だけれど、食べ盛りの子供とかは、きっとガツガツ食べる餃子なんだろうなぁと思った。
焼餃子の単品価格は、5個370円、7個470円。決して高くはないが、家庭でガツガツ食べるほどリーズナブルというわけではない。
ただ、ここには少しトリックがあった。
前述の価格は、店内飲食時のものであり、店頭のお持ち帰りコーナーでは、全く異なる価格で販売されていたからだ。
5個200円。10個400円。15個600円。これならば、かなりお得感がある。
僕が食べている間も、おかみさんは餃子を包み続けていたので、きっとピーク時には、このお持ち帰り餃子を買っていく人が多いのだろう。
やっぱり、この店の餃子は、昭和から続く、惣菜系の餃子だったのだ。
僕は、得心して店を出た。
焼餃子と中生ビール、枝豆しか飲食していないので、僕のお腹には、まだ余裕があった。
いや、あえて余裕を残したのだ。
途中、焼きしそ餃子や水餃子も食べてみたくなったが、その思いをぐっとこらえた。
折角十条に来ているのだから、この新規店だけじゃもったいない。
是非とも「あの」店に行かなければ。
僕は、ほどなく出会える筈の感動を楽しみに、十条商店街を出た。