週末に鑑賞。
4年前に発生した、ボストンマラソン爆弾テロ事件がテーマ…ということで、公開されたら、絶対に見に行こうと決めていた映画だ。
あの日のことは忘れない。
僕は、この情報が日本に届いた時、大きなショックと、テロへの怒りを覚え、エントリーにも書き残した。
その後、早々に犯人が逮捕されたことを知り、安堵した記憶があるのだけれど、実際、僕は何にもわかっていなかったのだ。
爆弾事件の後に、こんな凄いドラマがあったなんて。
この映画は、ボストンマラソン爆弾テロ事件という「実話」がベースになっていることは知っていたが、鑑賞前、僕は大きな誤解をしていた。
この映画の主役は、マーク・ウォールバーグが演じる、ボストン警察巡査部長。トミー・サンダース。
映画の宣伝ポスターなどでも、ひとりだけ断然扱いが違う。
だから、僕は、鑑賞前、こんな「ヒーロー」のような警官がいたのだろうと思っていた。
映画は、冒頭から、サンダースが過去に起こしたトラブルなども織り込みながら進むため、実在の人物だと捉え、感情移入して見ていた。
ところが。
途中から、なんだかちょっと違和感を感じてくる。
サンダースの発言や行動が、なんとなく、ご都合主義的で、嘘っぽい感じがしたからだ。
それとともに、この映画の本質は、「別」のところにあるような気もしてきた。
ストーリーは、爆弾テロ事件の被害者となった人物たちや、犯人、FBI特別捜査官、警視総監などを多角的に描いている。
最初は、あっさりと出てくる登場人物たちが交錯し、映画に大きく関わってくる後半は圧巻で、特に、被害者たちのドラマには、何度も息を呑んだ。
僕は、映画に伴う《脚色》なのだろうと思っていたが、エンドロール直前に流れる、「実在」の人物たちの表情、コメントで、その印象が大きく逆転する。
僕は、ここで、自然に涙が出てくるのを抑えられなかった。
テロに対する怒りがあらためてこみ上げてきたし、それと戦い、勝ち抜いた、ボストン市民の強さをあらためて感じた。
「語り継がれるのは〈悲劇〉ではなく〈希望〉」
という、この映画のキャッチコピーは、決して大げさではなく、「真実」の重みが溢れている。
パンフレットも、もちろん購入。
これを読んで、ようやく僕は、違和感の理由がわかった。
主役扱いのサンダースは、テロ事件に関わった実在の警官数人などを混ぜ合わせた架空の人物だということだったからだ。
この人物にまつわるトラブルや、妻も架空の存在。
故に、この夫婦だけは、エンドロール直前の「実在人物」コメントにも登場しない。
実話をベースにしているのに、主役周りだけが、「架空」の「脚色」だったのである。
僕は前半、サンダースに感情移入しすぎて、映画の本質を見誤っていた。この映画は、決して、サンダースで輝く映画じゃない。
事件が巻き起こした苦難に、決して負けることなかった街、ボストン。
この事件に関わった人たちすべての凄さを描いた映画なのだ。
映画のエンドロール直前で流れた、《真実》のメッセージは、パンフレットにも掲載されていた。
あらためて読むと、また、涙腺が緩んできそうになる。