その日の僕は、なんとなく満たされない気分だった。
「餃子の末っ子」で食べた焼餃子は、丹念に作られていたし、ニンニクが効いた僕好みの味で、とても美味しかった。
ただ、かなりのコンパクトサイズであるため、いかんせんボリューム不足。
2皿食べてもあっという間で、僕のお腹は、店を出た途端に、また空いてきた。
ということで、「どうしようかなぁ」と思いつつ、ぶらぶらとハッピーロード大山商店街を歩いていると…。
こんな案内看板を見つけた。
てのひら餃子?っていったいなんだろう。と思いながら、すぐ横に掲示されていた雑誌の記事を読んでみる。
どうやら「てのひらサイズの」ジャンボ餃子が食べられるらしい。
「餃子の末っ子」の餃子とは対極にあるような店で、僕は、大いに気になり、訪問してみることにした。
その店は、華やかな大山商店街の中にはなく、その脇道にひっそりと存在していた。
間口が狭く、ディープなイメージを醸し出している。
ちょっと中を覗いてみると、たったカウンター3席しかなく、そのうち1席で、常連っぽい人が、店のママさんと楽しげに話している。
「一見さん」には、ちょっと敷居が高そうな店だ。
僕は、ちょっとためらったけれど、ここまで来たら、あとには引けない。
潜入。
まずはとにもかくにも、やっぱりビールを注文。
それと合わせて、ママさんにオススメされた「できたて手作りお新香」を頼んだ。
いやぁ、これが実に美味しかった。
お新香…というか、塩もみの和え物といった感じ。
生姜が効いており、ボリュームも十分。塩加減も最高で、ビールにはぴったり合った。
カウンターには、このようなメッセージノートが置かれていた。
店を訪問した人が、その印象などを書き残している。やっぱり常連客の声が多かったけれど、初めて入店した人のメッセージもあった。
もちろん僕も、食べ終わった後に、感想を書き記している。
常連の人が、読み上げながら笑っていた「シルバー川柳」。
皆、ママさんの知り合いである、シニアの人たちが作ったものだとのこと。
僕も、常連の方と一緒に楽しませてもらった。
僕は、もちろん餃子も注文したので、ママさんは、早速その準備に取りかかっていた。
店の壁には、いくつかのメニューが掲示されており…。
定食メニューもあった。
「とろろ丼」以外は、すべてのメニューに餃子がつく圧倒的な餃子推し。とりわけ僕は、「餃子と餃子セット」が気になった。
ただ、ママさんの話によると、今は、定食メニューはお休み(欠席)になっているとのこと。
この店、「てのひら餃子 RAKUYU」は、栃木県足利市にある同店の《支店》で、シェフが本店に戻ってしまっているため、作ることができないようだ。
僕は、ちょっと残念に思ったが、でも、看板メニューの「てのひら餃子」は注文できるため、個人的にはあまり問題がなかった。
常連の方と川柳を楽しみ、ママさんと話しながら、待つこと15分。
僕の目の前に、お重が運ばれてきた。餃子を注文した筈なのに、なぜお重?
もしも、予備知識なく、この店に入っていたら、きっと驚いたことだろう。
僕は、雑誌の紹介記事を見ているから、その中身が何であるかはわかっていたが、お重の蓋を開けてみると、それでもやっぱり驚いた。