ビビッときた。
事前のリサーチには入ってない店だったのだけれど、この佇まいを見たら、「入るしかない」と思った。
いかにも、《昭和のラーメン店》《昭和の町中華》といった趣で、僕は、思わず惹きつけられてしまったのだ。
中華そば(ラーメン)と餃子の組み合わせは鉄板だけれど、それに加えて「おでん」というのは珍しいのではなかろうか。
ということで、僕は、やおら暖簾をくぐってドアを開けた。
店に入ると、いきなり「おでん鍋」に遭遇。本格的だ。
その手前では、常連の人たちが、おでんを肴に、楽しそうに飲んでいる。
店内も非常にノスタルジックで、昭和感満載。
カウンターのみで10席程度。その半分程度が埋まっていたが、僕は、奥の席を案内された。
手前にいた常連の方々は、店の女将さんと楽しそうに話して盛り上がっている。
僕は、ビールと餃子を注文することは決めていたが、やっぱりおでんが食べたくなった。
ということで、僕は入口付近のおでんゾーンに行って、いくつか選んでみることにした。
女将さんから「何にしますか?」と言われたので、僕は、「何がオススメですか?」と聞くと、《椎茸》だと言う。
椎茸は、鍋の具材としては欠かせないが、おでんの具としては珍しいような気がする。
僕は、オススメに従って、まず椎茸を注文。
それに加えて、玉子、大根、昆布といったオーソドックスなものをチョイスした。
辛子がたっぷり塗られた小皿に、たっぷりと味の染みこんだおでんたち。
ビールとの相性は申し分ない筈で、胸が高まる。
女将さんが、「うちの辛子は、辛すぎるから気をつけてね」と一言。
確かに、ちょっと辛めではあったけれど、そのぐらいの方がおでんには合うし、もちろん、ビールにもぴったり合った。最高だ。
女将さんの推薦通り、椎茸はとても美味しかった。
肉厚で柔らかく、そしてジューシー。おでんの汁をたっぷりと吸い込んで、抜群の味わい。
僕は、女将さんに「美味しいですね~」と言うと、「そうでしょう。大分の椎茸だもの」と言った。
話によると、女将さんは大分県出身とのこと。そして、大分県は、日本一の生椎茸産地なのだ。
椎茸はもちろんのこと、大根や玉子、昆布も、どれも絶品で、コンビニなどのおでんとは「格が違う」印象。(比べること自体、論外かもしれないが^^;)
僕は、この、こだわりおでんをを食べるためだけでも、来て良かったと思った。
しかしもちろん、餃子の注文は外せない。
ということで、満を持して女将さんに餃子を注文すると…。
ひとつひとつ、餃子を包み始めた。
女将さんひとりの営業で、大変だと思うのに、注文毎に手包みというのは素晴らしい。
女将さん曰く、「作り置きしておけば楽なのかもしれないけれど、餃子は、包みたてが美味しいのよ。」とのこと。
やっぱり、この店は、こだわりの店なのだ。
ということで、僕は、おでんとビールをたしなみながら、しばらく待っていると…。
餃子、登場!
薄皮で、その表面からは、ニラの彩りが透けて見える。
個人的には、もう少し《よく焼き》の方が好みではあるけれど、悪くない。
囓ってみる。
流石、包みたてだけあって、その皮はとても柔らかく、味わい深かった。
具の野菜も、丁寧に刻まれており、歯応えがしっかりある。
オーソドックスな味わいではあるけれど、飽きの来ない、いくつでも食べられそうな餃子だ。
下味はそんなについていないが、専用のツケダレがぴったり。
僕は、この店の雰囲気、女将さんの話、そして、美味しいおでんと餃子で、すっかり気分が良くなった。
ここまで来たら、締めのラーメンも注文すべきなのでないか?と思った。
…が、そんな気持ちをグッと我慢。
僕が松山に滞在できるのは、たったひと晩限り。
となれば、まだまだ餃子探しの旅を続ける必要があったからだ。
僕は、後ろ髪を引かれる思いながら、女将さんに会計を告げた。
「また来てくれるんでしょ?」と女将さん。
僕は、思わず「はい」と頷いてしまった。
なにしろ松山なので、いつ再訪できるかはわからないけれど、絶対にまた訪れようと心に決めて、僕は店を出た。