焼餃子の美味しさは、格別だった。
味わい深いのに、とてもあっさりしていて、いくらでも食べられそうな餃子。ビールとの相性も抜群だ。
僕がこれまで出会ってきた焼餃子の中でも、かなりハイレベル。
流石、「餃子工房」という冠は、ダテじゃない、と思った。
「餃子工房」なのだから、きっと、これから出てくる水餃子も美味しいに決まっている。
僕は、大きな期待を抱きつつ、わずかな不安が心によぎった。
店員の話によると、焼餃子とは、全く異なる具を使っているということだったからだ。
それくらい、この店の焼餃子の具は、完璧なバランスだと思えていたのである。
そんなことをつらつらと考えながら、絶品焼餃子に舌鼓を打っていると…。
まず、こんなものが出てきた。
どうやら、水餃子専用のタレらしい。
焼餃子は、何もつけなくても美味しかったし、特製のラー油をつけても美味しかった。だから、同じ具であれば、このタレの存在はなかったろう。
しかし、具が全然違うということだったので、ならば、このタレも納得だ。そんなことを思っていると、ほどなく、主役がやってきた。
水餃子だ!
うぉぉーっ。と、僕は叫びそうになった。
見るからに、もちもちプリプリで、艶っぽい皮。ごろんとした筐体。
焼餃子とは、具だけじゃなく、明らかに皮も違う。それが一瞬でわかる餃子だった。
これは、焼餃子のおまけなんかじゃない。水餃子であるべき皮と具の筈だ。美味しいに違いない。そうに決まった。
僕は、かなり評価のハードルを上げて、この餃子に齧りつき、そして…。
痺れた!
と言っても…辛さで舌が痺れたとか、そんな意味じゃない。
僕の身体全体が、感動で痺れた、という意味だ。それぐらい、僕は、この店の餃子に痺れてしまったのだ。
水餃子は、食前に評価のハードルを上げていたにもかかわらず、それをゆうゆうと超える感動を与えてくれた。
何が凄いと言って、その具が最高だった。
具の殆どが「肉」なのだ。
焼餃子が野菜中心のマイルドな(しかし味わい深い)風味だったのとは対照的に、こちらはぎっちりと(そしてこれまた味わい深い)肉が詰まっている。
そして、それを受け止める、もちもちの厚い皮がこれまた絶品。
焼餃子とは、皮も具も完全に異なる、しかしこれも見事な餃子だった。
さらに、前述の《水餃子専用タレ》が、見事にマッチ。
甘辛のネギダレで、それにつけて食べると、重厚な肉の風味が、一段と際立って感じる。実に食べ応えのある、主食級の餃子だ。
重厚な水餃子を食べていると、あっさりとした焼餃子が恋しくなってくる。また、焼餃子を食べていると、水餃子が食べたくなる。
餃子の無限リピート状態。まさにこれは、餃子の最強タッグではないか。
この日は、他に予定もあったため、無限リピートはできなかったけれど、時間とお腹に余裕があれば、永遠に交互注文し続けていたくなるような餃子だった。
この店には、他に、「海老餃子」というメニューもあった。
5個で1,000円もするため、ちょっと二の足を踏んだのだけれど、焼餃子、水餃子を食べた今、その躊躇いは消えた。
値段の張る分も含めて、この店ならではの、もの凄い餃子に違いないからだ。
それは、次回来訪時のお楽しみに残しておくことにした。
とにかく素晴らしい店なので、必ず、また近々行くつもりだ。