ずっと、気になっていた店だった。
足柄峠走の拠点、山北駅に向かう際、乗換駅の国府津駅前に、ぽつんと存在する、この店だ。
「餃子ショップ」。
実にストレートで、かつ、レトロな響き。その、なんともとぼけた店名が、僕の心を惹いた。
以前、東海道線から御殿場線への乗り換えに大きく時間が開いた時、途中下車して駅前をふらふらしていたら発見。
その日は、まだ営業が始まっていなかったが、シャッター脇に掲げられていた、この絵看板が、なんだかとても印象に残った。
印象的なのは、それだけではなかった。
かなり年季(と言うか何というか…。)の入った、おみやげ用餃子の案内看板。
「お持ち帰り用 揚げ餃子丼」看板。
どれもこれも、インパクトが大きかったので、僕は、いつかちゃんとこの店の餃子を味わわなければ…と、思っていた。
以降、峠走に行くたびに気になってはいたのだけれど、別件で用事があったり、時間が合わなかったりして、なかなか行けなかった。
しかし、僕は、この「山の日」こそは、この店に行くべく、心を固めていた。
祝日ではあったが、ランチタイム営業も行っていることを、予め電話で確認していたので、峠走からの帰り、安心して国府津で途中下車。
一目散で、店に向かった。
やった、営業中だ!
電話で確認済みではあったものの、営業中の状態を見たのは初めてだったので、やっぱり嬉しかった。
入口には、セットメニューの案内が掲示されていたが…。
ひものセット?餃子ショップなのに??
他の看板類同様、このメニューもやたらと汚かった年季が入っていたので、正直、僕は一瞬戸惑ってしまったほど。
しかし、この店を訪れたことのある餃子繋がりの友人が、「美味しかった」と言っていたし、何より僕は、餃子ランナーである以上、こんな個性的な店を見逃すわけにはいかない。
ということで、入店。
店内は、カウンター6席程度と、テーブルが2つで、こじんまりとまとまっていた。
昭和の趣を感じるが、その雰囲気は悪くない。
店員さんたちの愛想も良く、常連の方々で賑わっており、地元の人気店なのだろうなぁ…という印象を受けた。
テレビでは、高校野球を中継していた。
おつまみ類も多数あり、昼間からたっぷり呑める構成。
実際、常連と思われる人たちは、テレビを見ながら、呑んで楽しく語らっていた。
僕は、悪くない店だなぁとは思ったものの、「餃子ショップ」という名前の割に、餃子色が殆どないことに、ちょっと失望しかけていた。
メニューを一通り眺めてみると…。
餃子を見つけた!(下段、左から4番目。)
《手作り》という表示にこだわりを感じるものの、横に並んでいるメンチカツの《手作り》文字の方が大きくて、餃子ショップとしてはどうなんだ?という気がした。
餃子系としては、他に、「餃子風ワンタン」「餃子風ワンタンメン」という謎のメニューもあった。
僕は、普通のワンタンと、いったいどこが違うのだろう…?と思い、ちょっと気になったが、今回は見送って、餃子が出てくるまでの、ビールのアテには、「キムチ豆もやし」を注文。
いやはや、このビールが旨かったこと。
豆もやしも、おまけの枝豆も、餃子までのつなぎとしては、十分だった。
餃子を待っている間、店内をさらに見渡してみると…。
店の奥に、「餃子ショップ」のTシャツが入った額を発見!
餃子ショップランニング同好会、という襷(?)も一緒に飾られており、なんだかちょっと親近感を感じた。
ここでふと、料理を運んできている店員のお姉さんの姿を見てみると…。
おぉ、「餃子ショップ」Tシャツのレッドバージョンだ!
僕は、ランニング同好会の件も含め、色々尋ねてみたくなったが、店は繁盛していて忙しそうだったし、初訪問でズケズケ聞くのはなぁ…という気もしたので、自粛することに決めた。
と、ビールを飲みながら、つらつら考えているうちに…。
焼餃子が来た!
ただ、この時点では、僕は、それほどワクワクしなかった。
餃子のサイズは、iPhone SEとの比較でわかるように、かなり小ぶり。焼き色は綺麗だったが、抜群に美味しいというような雰囲気は感じなかったからだ。
僕は、ちょっと物足りない気持ちも抱いたが、まぁ、値段も安い(1皿350円)し、こんなものかとも思いつつ、一口齧ってみると…。
うわっ、美味しいじゃないか!
小ぶりながらも、具がたっぷり詰まっていて、食べ応えがある。
キャベツがザクザクの野菜系。ニンニクがっつり。皮は薄皮で、カリッと焼けていて、具とのバランスも絶妙。
昔懐かしい、昭和の味とも言えなくないが、その、レトロな店名には合っている。
まさに、「餃子ショップ」の看板を裏切らない味だ。
個人的には、どストライクの餃子なので、次の峠走帰りにもぜひ立ち寄って、今度は、お土産も買って帰りたいと思う。