練馬駅から、徒歩10分以上。
寒空の下で歩き続けた僕は、身体がすっかり冷え切っていた。
しかしようやく、目指していた店に辿り着いてホッとした。
店の名前は、「多来福」(たらふく)。
創業は、昭和四十年。練馬の地に根付いた、町中華の老舗だ。
食事時は行列になることもあるという人気店だが、このご時世なので、そういった時間帯を外して訪問。
案の定、店内はガラガラで、客は僕ひとり。
ソーシャルディスタンスを気にする必要さえもない。逆に、「大丈夫だろうか…」と、心配になってしまうレベルだった。
政府は、外食全てダメみたいに言っているけれど、こういった店で、ひとり黙々と食事をすることに、いったい何の問題があるというのだろう。
もしもこれがダメだというなら、その根拠を示して欲しい。
僕は、毎日、満員電車に揺られて、仕方なく通勤しているが、それの方がよっぽど問題だと思う。*1
入店後、何はともあれ、ビールを注文。
ちょっとしたサラダが一緒についてきて、これはこれで美味しかったのだけれど、ボリューム不足。
ということで、ビールのアテを注文するため、メニューを開こうとしたが、その必要はなかった。
僕が座った席の横に、それらが、写真付きで明示されていたからだ。
どれもこれも魅惑的な、ビールのお供たち。
もちろん餃子はマストなのだが、3点盛り(チャーシュー、メンマ、ザーサイ)も合わせて頼んだ。
すると、まずは…。
3点盛りが登場。
写真で見たイメージよりも、かなりボリュームがある。
チャーシューは肉厚で、その下にはキャベツも敷き詰められており、食べ応えは十分。
味も上々で、ビールのアテとしては、申し分のない料理と言える。
僕は、それに満足しつつも、しかし、ビールを呑むのは控えめにした。
この後、史上最強の《ビールのお供》がやってくることになっていたからだ。
そして…。
焼餃子がやってきた!
手包み感が伝わってくる魅惑的なフォルム。焼き色の焦げ目も申し分ない。
食べる前から、「これは絶対に美味しいぞ!」と確信させてくれる餃子だった。
最強のパートナー、ビールとの競演。
ビールのお供に餃子は欠かせないが、餃子のお供としてもビールは欠かせない。
いわばWIN-WINの関係であり、だからこそ史上最強なのだ。反論は認めないw
一口噛んでみると、僕の口内に幸せが訪れた。
甘い!そして旨い!
皮に独特の甘みがある上、肉の甘みがこれまた絶妙。噛みしめると、口内にじゅわっと肉汁が溢れる。
いやぁ、これは美味しいなぁ。美味しいぞ。
僕は、基本的に「野菜ザクザク系」「ガッツリニンニク系」の具が好きなのだけれど、この餃子はそれと対極にある。
ニンニクは、無口臭のものを利用しているということで、その場合、ニンニクの持っているパンチ力が落ちるのだけれど、この餃子にはそれが合っている。
柔らかくて優しい、肉の甘み、旨味が生かされた餃子なのだ。
僕は思わず「お替わり」をしたくなったが、なんとか思いとどまった。
この店に来た以上、どうしても食べておきたい、重量級の料理があったからだ。
僕の胃は、それほどキャパシティが大きくないため、もしも焼餃子をお替わりしてしまったら、さらにもう1品を注文するのは無理。
そもそも、3点盛りが想像以上のボリュームだったため、僕のお腹は、この時点でも結構膨れていたのである。
だから僕は、多少の不安を感じつつ、でも、当初の予定通りそれを注文した。
*1:「問題があると思うならやめろよ!」と言われそうだが、世の中には、テレワーク化できない業務だってある。通勤して仕事をしなければ、僕は生きていくことができない。