iPhone Xs/Xs Max/XRの発表を受けて、思い出したことがある。
いや。決して忘れてなどいなかったのだけれど、なんとなく書きそびれていた。
「iPhone SEは、水に弱い」という話だ。
iPhoneは、7以降の端末で、初めて防水機能が搭載された。
そのニュースを知った時は、本当に羨ましくて、大きく心が揺れた。
防水性能は、IPX7ということで、「一時的(30分)に一定水深(1m)の条件に水没しても内部に浸水しない」というレベル。
だから、完全に安心というわけではないけれど、でも、日常的には心強かった。
今回発表されたiPhone XSシリーズでは、その等級がひとつ上がって、IPX8になった。
「最大で水深2メートル30分間に耐える」最強レベルの防水性能だ。
ここまで来ると、全く水を気にせず走ることができる筈で、「あぁ、あの時、僕のiPhoneがXSだったらなぁ…。」と思わずにはいられなかった。
そう、僕は、「非」防水のiPhone SEで苦い経験をしてしまったからである。
時は、3週間前。北海道マラソン時に遡る。
あの時の札幌は、まだ、何ごともない素敵な街並を保っていた。
僕は、「北海道マラソンにしては」涼しい天気と、風を味方につけて、とても気持ちよく走ることができた。
この1年間、座骨神経痛の発症や骨折などで苦しみ続けていたから、それから脱出できたことは、本当に嬉しかった。
そのレース前後も、僕は、チームはてブロの皆さんと一緒に、至福の、夢のような時間を過ごさせていただいた。
が、その一方で、衝撃的なことが起こっていたのである。
レース翌日。札幌市街のホテルで迎えた朝。
僕は、前夜(僕にしては)ちょっと飲み過ぎたため、ちょっとクラクラした頭で、iPhoneを眺めていると、なんとなく様子がおかしいことに気がついた。
画面の一部が滲んで見えるのだ。
その時は写真を撮ることができなかったので、帰京してからの状態を報告させていただくと、こんな状況だった。
一見、何ごともないかのように見えるのだけれど…。
背景を変えてみると、白いまだら模様が浮かび上がる。
明らかに滲んでいるではないか。
あぁ、僕のiPhone SEは、なんと、浸水してしまっていたのだ。僕は、それに気がついて、ひとりホテルで大いに驚愕した。
思い当たる節はある。全ては僕の自業自得だ。
今回、北海道マラソンで、僕はiPhoneを携帯して走ることにした。
レース中の情景を撮るつもりはなかったが、レース前の時間つぶしと、レース直後の写真が撮りたかったため。
僕はこの日、ウェストポーチなどは使わず、「ポケットいっぱい短パン」装備で臨んだ。この短パンを使えば、レース中には、腰周りのストレスを殆ど感じることなく、走ることができる。
僕にとって、マラソンレース必須アイテムと言っていい。
だから今回も、僕は、とても気持ちよく、北の大地を走り抜けることができた。
が、そこにひとつ大きな誤算があった。陥穽が潜んでいた。冒頭の台詞を繰り返す。
「iPhone SEは、水に弱い」という話だ。
ポケットいっぱい短パンは、とても素晴らしいウェアだけれど、もちろん防水ではない。
だから僕は、iPhoneを、小さなビニール袋の中に納めてから、ポケットに入れた。
その袋は、道マラ受付でもらった安全ピンなどが入っていた、簡易なものだったが、問題ないと思っていた。
が、それが大いに甘かったのだ。
今回のレース、北海道マラソンは、それほど気温が上がらなかったが、それでも24℃ぐらいにはなった。
その中を3時間半以上走り続けているのだから、僕は、相当の汗をかいた。練習ランなどとは、桁違いの量の汗を。
皮膚から溢れ出すその汗は、当然、ウェアにも染みこんでいく。
さらに。
北海道マラソンは、どこまでもどこまでも延々と続く、給水所が大きな魅力。
それは、2.5km毎に配置され、暑さからランナーを守ってくれる。
僕は、給水所に辿り着くたび、水を被りながら走り続けたことを思い出す。
そう。僕は、身体じゅうに水を被り続けながら、走り続けていたのだ。
そのたびに僕は気持ちが良くなり、蘇生した。レース中ずっと、僕の身体は、冷たい水を求めていたからだ。
が…。ポケットの中のiPhoneは…?
身体に水を浴びせまくれば、当然、一時的に、外から雨を受けているのと同じような状況になる。
となると、防水ではないiPhone SEはどういう運命になるか。
僕は、そんな重大な事実に気がつかず、走り続けていた。バカすぎだ。
前述の通り、僕のiPhoneは、簡易なビニール袋に入れていたため、最低限の耐水処理は行っていた。
しかし、そんなヤワな袋では、レース中、長時間にわたって、ウェアの内外から押し寄せる怒濤の汗と水しぶきを防ぐことができなかったのだ。
レース直後。
スタッフの人に記念写真を撮ってもらう際、ポケットに入れたビニール袋は、ぐっしょりと水にまみれていた。
その水は、ビニール内にもしっかりと染みこんでおり、iPhoneの表面もベタベタ。撮影前にしっかりと拭かなければならなかったほどだ。
思えばこの時に、iPhoneへの浸水が起こっていたことは間違いない。
しかし僕は、レース直後の高揚感に浮かれて、それに気がつかなかった。
その後は、最高の青空打ち上げと餃子ナイトに雪崩れ込んでしまったため、僕は、さらに長い時間、その事実を掌握できずにいた。
そして。
レースから一夜明け、ホテルの部屋で、僕は愕然とすることになったのだ。
慌てて色々と情報を収集してみると、iPhone内部への浸水は、かなり危険な事態であることがわかった。
とりあえず現状は動作していても、その後、基盤などへも染みこんでいくと、動作不能になる可能性が出てくるらしい。
これはまずい。本当に大変な事態だ。
僕は早急な対処、修理が必要だと思ったので、急遽、レース翌日の予定を変更し、東京へトンボ帰りすることに決めた。
(以下、続く)