時は、午前5時半過ぎ。
国道15号線、いわゆる第一京浜を、僕はひたすら走っていた。途中にコンビニや牛丼屋などの看板を見かけるたびに心が揺れたが、僕はぐっと我慢した。
僕が、今ここで食べるべきなのは、コンビニのおにぎりや牛丼じゃない、と思っていたからだ。
人も車も多いこの地域ならば、きっと、僕の求めている店が現れてくれる筈と信じて走り続けた。
しかし…。状況はそんなに甘くなかった。
京浜急行を横目に見ながら、品川…新馬場…青物横丁を通過。
うーん、これはちょっと厳しいか、蒲田に着いたら、街道を離れて探してみようか…と心が揺らぎ始めた。
そんな時、国道を挟んだ通りの向こうに、この看板が目に飛び込んできた。
ラーメン屋だ!
とんこつラーメン。「道楽」。
早朝にも関わらず、煌々と明かりがついていて、暖簾も出ている。どうやら24時間営業のようだ。
看板や暖簾にある《創業昭和六十一年》という表記は、大々的に謳うほどの歴史なのか?と一瞬思った。しかし、それは、僕が昭和生まれの年寄りゆえに生じた誤解。
よく考えれば、今は平成29年なのだから、もう、30年以上も続いていることになる。伝統ある店なのだ。
ならば(?)きっと安心できるだろうと思って入店。
ただ、僕がこの店に求めていたのは、店の看板メニューである、とんこつラーメンではなく…。
もちろん、焼餃子だ。
店内に入って、メニュー確認のために写真を撮ったが、ラーメン名は見切れてしまって、餃子にフォーカスを当てているのが、僕の正直な気持ちを表しているw
店員は、僕が入店、着席するや、メニューを持参し、ラーメンやつまみ、アルコール類などを勧めてきたが…。
僕は、ひるまず、「餃子だけでもよろしいでしょうか?」と、ひとこと。
店員は、爽やかな笑顔で、「はい。わかりました」と、快く応えてくれた。
お腹は十分空いていたので、ラーメンを食べることもできたのだけれど、この後もまだまだ走るので、胃にあまり負担をかけたくなかった。
店内の掲示だけではなく、カウンターにも餃子単独のメニューが常備されていた。
店の一番の売りは、もちろんラーメンだと思うのだけれど、餃子も「推し」のひとつであることは間違いないようだった。
ただ、あくまでラーメン屋のサブメニューなので、あまり期待しすぎないように…と思いながら、僕は待っていた。
早朝の店内は、僕の他に、おそらく深夜から飲んでいると思われる酔客2人だけ。
そして、この2人は、声高に激論を戦わせていた。激論…と言っても、お互い酔っているせいか、話が全くかみ合っておらず、僕は、ちょっと苦笑しながら(何とはなしに)聞き入ってしまった。
そんな会話を肴に…待つこと10分。
焼餃子が来た!
こんがり焼けていて、その見た目から、カリカリ感ともっちり感が伝わってくる。
一口囓ると、ジューシーな肉汁が口の中に流れこんできた。
飛び出る、というほどではないが、肉汁の旨味がしっかり感じられる餃子だ。
見た目通り、皮はとってももっちりしていて、カリカリ感もある。肉と野菜のバランスもいい。
ニンニクは入っていないと思うが、ニラが入っていて、スタミナもつきそうな気がする。
うん、悪くない。
あまり期待値のハードルを上げなかったせいかもしれないが、僕は、とても満足できた。
ロングランイベントの、ファーストエイドとしては十分過ぎるほどだ。
僕は、この餃子に大きな元気をもらった。
その証拠に、店に入るまでは、あまりスピードが乗らなかったのに、店を出てしばらく経った頃、ふと、ガーミンを見たら、レースペース(!)のラップで走っていたからだ。
いやぁ、やっぱり、餃子は、ランニングに効く。
ここから先は、蒲田、川崎、横浜といった市街を走って行くので、きっとまた、素晴らしい餃子に出会えるだろう。
僕は、第二、第三と続く筈の餃子エイドを楽しみに、心躍らせて走り始めた。
…のだけれど。
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