最近僕は、もっぱら、町中華の店を訪ね歩いている。
しっかり計画して訪れる時もあれば、ふらっと見つけた店に飛び込むこともある。
今回、ご紹介させていただくのは、後者のパターンだ。
このパターンの場合、当たり外れの格差が大きい。《当たり》だった場合は、自分の直感を信じてよかったなぁという思いも含めて嬉しくなる。
例えば、こういった店に入った場合だ。
後で調べてみたら、ここは、食べログなどの評価も高い《知る人ぞ知る》名店だった。
しかし、そんな予備知識なしで訪れたことで、より楽しかった気がする。
ただ…。こういった《当たり》ばかりとも限らない。
ふらっと入ってみて、後悔する店も、わずかながらある。
今回は、そういった例に出会った時の気持ちを書き残しておきたい。
あくまで個人的な印象の覚書なので、店の名前は伏せさせていただく。
都内。某日某所。
僕は、もともと別の店に行く予定だったのだけれど、そこへ行く道すがら、いかにも町中華といった佇まいのラーメン店が目に入り、ちょっと心惹かれた。
ので、入店してみることにした。
入口に出ていた、おつまみメニュー。
店の外観はどう見てもラーメン屋にしか見えない店なのに、「自家製ハンバーグ」?
その他、鶏皮のポン酢や鮭の焼魚などもあり、大衆食堂的なメニューが並んでいた。
ただ、こういった《何でもあり》の店は結構好きなので、期待を持って僕は暖簾を潜った。
店内は、カウンターのみ10席程度。
この日は、ママさんが1人で切り盛りしていた。
先客は2人いたが、ともに常連と見えて、ママさんと世間話を繰り広げている。
僕が席についている間は、ひとしきり週末競馬の話題で盛り上がっていた。
この店のメイン料理は、もちろんラーメンだったが、その他にも、つまみ類多数。
やっぱりここは、居酒屋的に使うことができる店のようだ。
僕は、色々と食べたくなったのだけれど、この日は、別の店に行くことが決まっていたため、グッとこらえることにした。
お約束の「餃子とビール」だけでも良かったが、餃子が出てくるまでの《アテ》が欲しい。
ということで、【とりあえず!】と書かれているメニューの中から、枝豆を選択。
しかし、これが大失敗だった。
まず、瓶ビールが出てきて…それからしばらく経っても、枝豆は出てこなかったからだ。
ママさんは、常連客達と競馬の話で盛り上がりまくっており、まるで枝豆を出してくれる雰囲気がない。
何か、天ぷら的なものを作っており、常連の人たちに、「サービスだから食べてね」と言って提供している。
それはそれで別に構わないが、僕の頼んだ枝豆はいったいどうなったんだ?
店が超忙しい状態であれば、仕方がないとは思うが、常連へのサービス品を作っているぐらいだから、そうは思えない。
これは絶対に忘れられているな…と思い、僕は、「すみません、枝豆は…?」とママさんに言った。
するとママさんは、「次に作るから待ってて」と悪びれもせずに答えた。
忘れてたわけじゃなかったのか?
メニューによって、時間のかかるものもあるだろうから、提供順が前後するのはよくあることだ。
しかし僕は、ビールと一緒に食べたいから【とりあえず】メニューを頼んでいるのに、どうして、常連へのサービスメニューよりも後に作り始めるのか。
僕は、釈然としない気持ちで、いっぱいになった。
その後も、ママさんと常連たちは、競馬談義に花を咲かせ、大声で笑い合っている。
何だか、この店の中で、僕ひとりだけが取り残された雰囲気だ。
待つこと10分以上。
ようやく枝豆が出てきたので、ビールと並べてみた。
ビールはちょっと気が抜けてきてしまっていたし、枝豆は、いい加減に塩をまぶした感じ(僕が督促したからか?)で、どうにも美味しくない。
僕は、ちょっと悲しい気持ちになりながら、それをひとつづつ、つまんで食べていた。
ほどなくすると、餃子が登場。
僕は、餃子を眺めていたら、少しだけ気分が和らいだ。
餃子は、僕にとって、ポパイのほうれん草(たとえが古いw)的なものだから、きっとこれが元気をくれる筈だ、と思った。
ただ、ここでまたしても、躓く。
卓上には、醤油もお酢も用意されておらず、「いったいどうやって食べればいいんだ?」状態。
ママさんは、僕に餃子を提供し終えると、常連の隣に座って、自らの食事を始めている。
大声で笑いながら、競馬の予想中。どうにも声をかけにくい雰囲気だ。
しかし、このままでは埒があかないので、何とか勇気を出して、「すみません」と呼びかけ、「醤油がないんですけど…」と告げる。
すると、「すみませーん」と言いながら、奥から醤油とお酢のセットを出してきて、各テーブルに並べ始めた。
どうやら、それを出すこともすっかり忘れていたようだ。
競馬の予想をする前に、やるべきことがあるんじゃないか?
僕は、小一時間問いただしたい気持ちになったw
餃子は、まぁまぁ美味しかった。
いわゆる「ラーメン屋の餃子」といった趣で、ニンニクの効いた野菜系の餃子だ。
値段も350円だから、そんなに高くない。
だから、それまでのいきさつに目をつぶれば、それなりに満足できる店だったかもしれない。
いや。
この日のママさんは、たまたま競馬の話題で我を忘れていた(?)だけで、普段は、フレンドリーな感じの、いい店なのかもしれない。
ただ、ひとたびこんな扱いを受けてしまうと、再訪はしにくいなぁ…というのが正直な気持ちだ。
町中華の経営が厳しい時代。常連客が大切なのはわかる。
僕は単なる一見客なので、常連と同じような扱いを望むのは、お門違いというものだ。
しかし、一見客だって、その店が気に入れば常連になる可能性はある。
別に多くは望まない。
単に、普通に扱ってもらえばいいだけなのだけれどなぁ。