とりあえず、ホッとした。
BlackBerry KEY2に、「あの」Simejiが搭載されるという驚愕の情報が、誤報という形で幕を引いたからだ。
僕は、そのニュースを知って以来、とても複雑な心境に陥っていたので、その心境から解放されたことは嬉しかった。
悪い冗談はこれで終わりにしてくれ、と、笑い飛ばして終わりたかった。
が、ホッとしてばかりもいられない。
今回の誤報を伝える各社のコメントが、いろいろと引っかかるからだ。
まずは、Simejiを開発しているBaidu社のプレスリリース。(赤字強調は筆者。)
2018年5月下旬時点でTCL Communication社よりSimejiのプリインストールに関する開発打診を受けたことは事実ですが、スケジュールに困難があり対応リソースの調整も不可能であることから合意に至りませんでした。
打診はあったのか…。
スケジュールに困難がなければ、そのまま搭載されていたのかと考えると身震いしてしまう。
ただ、実際は合意に至っていないのだから、本来であれば、そのまま、誰にも知られることなく、終わっていた筈だ。
しかし、KEY2日本版の販売代理店となるFOX社は、6月8日のプレスリリースで、以下のように発表してしまう。
KEYone以前のモデルは、日本語入力・変換が最適化されておらず、ウィークポイントとなっていました。
今回の「BlackBerry(R)KEY2」は、文字入力変換アプリSimejiの機能が、KEY2に最適化された状態でプリインストールされており、日本語入力・変換が可能になりました。
実に嬉々とした、自信満々なリリースに見える。
しかし、僕は、声を大にして言いたかった。
「Simejiプリインストールの方が、よっぽどウィークポイントだよ!」
そんな不満を感じたのは、もちろん僕だけじゃなかった。
BlackBerryのセキュリティ性を信じ、使い続けてきた多くのユーザーたちは、大いに反発した。
そんな僕たちのクレームを、受け止めたせいなのかどうかは不明だが、今週、FOX社も、お詫びと訂正のリリースを発表。
2018年6月8日(金) 10時00分に配信いたしましたプレスリリースの内容に一部誤りがございました。訂正した内容を再度配信させていただくとともに、関係者各位の皆様には深くお詫び申し上げます。
(中略)
今夏発売時点で、文字入力変換アプリSimeji(シメジ)の「BlackBerry(R)KEY2」へのプリインストールはございません。
この夏のBlackBerry KEY2発売時に、Simejiのプリインストールはなくなった。朗報だ。
Simejiを開発しているBaidu社は《スケジュール上の問題》で、TCL社と合意に至らなかったと書いているから、辻褄は合う。
要は、TCL社とBaidu社での折衝を知ったFOX社が、勇み足リリースをした、ということで、この騒動は幕引きを迎えそうに見える。
が、本当にそうなのだろうか?
前述、FOX社のプレスリリースには、以下のようなことも書かれている。
現状、日本語入力・変換の最適化に向けて、メーカー独自の開発を進行中です。詳細は改めてご報告させていただきます。
メーカー独自の開発を進行中???
これはいったいどういう意味なのだろう。
Simejiへの反発があまりにも大きかったために、「本来はSimeji搭載の予定だったが、大至急で他の日本語入力アプリに切り替えている」ということであれば、申し分ない。
しかし、Baidu社のプレスリリースを信じるならば、Simeji非搭載の理由は、スケジュール上の問題だった筈だ。
対応スピードの速そうなBaidu社でさえ、スケジュールに困難があってSimejiの搭載ができなかったというのに、今から新規で進行して、この夏の発売に間に合うのだろうか?
それとも、日本版だけは、その最適化を踏まえた上で発売される(だからグローバル版よりも遅れる)ということなのだろうか?
BlackBerry KEY2の情報に関しては、TCL社とFOX社の連携が、どうにもうまくとれていないような雰囲気があり、僕は、どうにも不安を感じている。