巣鴨駅から、徒歩約2分。
急げば1分で着くかもしれない。
駅前の路地裏に、ひっそりと、その店は存在していた。
店の名は、「味っ子」。
うっかりとしていると、通り過ぎてしまうぐらい間口が狭い。
中もあまり見えないので、初めての人は、ちょっと抵抗を感じる人がいそうだ。
しかし、最近僕は、こういった店にこそ魅力を感じてしまう。
入口の看板では、「らーめん」が大きくが強調されているが、専門店でないことはリサーチ済みだったため、安心して入店。
店内は、テーブル席のみで、カウンターはなし。
まだ時間が早いこともあってか、店内は空いており、先客は2名だけ。
どこに座ってもいいということだったので、僕は、ゆったりと座らせてもらった。
席から、壁に貼ってあるメニューを眺めてみる。
ラーメンや炒め物だけではなく、丼物、焼き魚、さらに、各種おつまみ類も揃っている。
ただ、雑然とした感じはなく、どことなくほのぼのしている。
昭和テイストが溢れた、飲める町中華店と云った雰囲気だ。
僕は、何はともあれビールを注文し、そのアテとして、全品350円のおつまみ群から、「もやしきゅうり盛り」を選択した。
たっぷりのもやしときゅうり。さっぱりとした醤油だれの味付けが絶妙で、ビールに合う。
そんな前菜に満足しながら、僕は、メインディッシュを注文することにした。
もちろん餃子に決まっているが、注文時に少しだけ迷った。
餃子の種類が3種類あったからである。
(焼)餃子、水餃子、揚餃子。*1
焼餃子は外せないが、水餃子と揚餃子はちょっと迷った。
迷ったら両方…と云う手もあったが、それは、味を確かめてからでも遅くない。
ビールのお供としては、揚餃子の方が合いそうだったので、まずはそちらを選んだ。
ということで、焼餃子と揚餃子を注文すると…。
厨房では、すぐに餃子を包み始めているのが見えた。
冷凍でも包みおきでもなく、「注文ごとに包む」餃子は、テンションが上がる。
冷凍だろうが何だろうが、美味しければ別に構わないのだけれど、でも、《僕のために餃子を包んでくれている》という、特別感が嬉しいのだ。
それからほどなくすると…。
揚餃子がやってきた!
こんがりときつね色に焼き上がっていて、美しい。
その表面からクリスピー感が伝わってくる。僕は、大きな期待を込めて囓ってみた。
うわっ。旨いぞ!
なんといっても、そのカリカリ感がたまらない。
具にはしっかりと下味がついているので、何もつけなくても十分に美味しい。
ビールのお供としては、最高の餃子だ。
僕がそんな揚餃子に舌鼓をうっていると、厨房の奥から、ジリジリとした音が聞こえてきた。
それはもちろん、焼餃子の焼き上がり音だから、勢い、僕の胸は高まる。
そして。
焼餃子もやってきた!
いやはやこれも、こんがり焼けて、実に美しい焼き色だ。その表面から、手作り感、手包み感が、伝わってくる。
焼餃子、揚餃子、ビールの競演。
それぞれの醸し出す《濃い》彩りが、テーブル上で見事に調和している。
めくるめく3種のゴールデントリオだ。
焼餃子は、噛みしめると、じわっとした肉汁が口内に溢れた。
その具は、揚餃子と同じだと思うのだけれど、揚餃子では肉汁を感じなかった。これは、焼餃子だからこその味わいだろう。
同じ具であっても、調理方法が異なれば、その味わいも異なってくる。
また、皮の風味も、揚餃子よりしっかりと感じられた。
食感の揚餃子、風味の焼餃子。どちらも甲乙つけがたく、僕は2種類を注文して良かったなぁと思った。
こうなると、水餃子も食べたくなってしまったが、それは、次回のお楽しみに残しておくことにした。
駅からの利便性もいいし、何より心落ち着く店。ぜひともまた再訪したい。
*1:別途に、「ミニ餃子」「ミニ水餃子」というものもあるが、これは、サイズのことではなく、単に個数が半分だということらしい。