悪夢であるなら覚めてくれ。
いくら新年だからといって、おとそ気分で冗談を言うのは勘弁してくれ。
僕は、思わずそう叫びたくなってしまった。
ThinkPad X9という名前で発表された新モデルの画像は、それぐらい衝撃的。
なんと、「あの」ThinkPadから、トラックポイントが消えてしまったのである。
いったい、これのどこがThinkPadなんだ。
右下についているロゴはフェイクで、実際は、Lenovo IdeaPadなんじゃないか?
いや。そうだと言ってくれ。頼む。
僕は、その画像を何度も凝視し、「あるべきものがない」ことに愕然とし、祈り続けたが、徒労に終わった。
Lenovoの公式Webサイトでは、この新モデルが自慢げに紹介されており、デザインの変更に対しても、全く臆していないことがわかったからだ。
「Lenovo at CES 2025」という新製品発表会のストーリーとして、そのモデルは自慢げに語られていた。
今回のポインティングデバイス変更については、このように述べられている。
the reimagined keyboard combines ThinkPad’s renowned typing comfort with a modern touch offering precise tactile feel and incorporating a large haptic touchpad that provides responsive feedback for seamless navigation.
(AI訳)
再構築されたキーボードは、ThinkPadの定評あるタイピングの快適さと、正確な触感を提供する現代的なタッチを組み合わせ、シームレスなナビゲーションのための応答性の高いフィードバックを提供する大きな触覚タッチパッドを内蔵しています。
トラックポイント(廃止)に関する言及ゼロ!
この部分のみならず、全体のストーリーを見渡しても、トラックポイントについては、たったの1文字も語られていなかった。
あり得ない!
かつて、IBMで販売されていた時代からずっと、トラックポイントはThinkPadの象徴であり、アイデンティティだった。
ThinkPad黄金時代に上梓された、こういった研究本(あまりに好きすぎて2冊も購入w)の表紙を見ても、それは明らか。
その操作性のみならず、デザイン的にも、トラックポイントがあるからこそ、ThinkPadだと言えたのだ。
そんなThinkPadのシンボルを、あっけなく捨て去ったLenovoには、唖然呆然。
先行発表されたThinkPad X1 Carbonシリーズにはトラックポイントが搭載されており、他のThinkPadシリーズに関する言及もないため、今回のThinkPad X9モデル限定のデザイン変更、という可能性はある。
しかし、ThinkPadがThinkPadであることの矜持、アイデンティティが崩されてしまったことは事実で、今後、そのブランドイメージを元に戻すことは難しい。
ThinkPadの礎を作り、黄金時代を築いたIBM時代の面影は、もはや皆無になってしまいそうだ。
中国のLenovo社に身売りされてしまった以上、こんなことになるのは仕方がないことなのだろう。
ただ、僕がこよなく愛したThinkPadが、こんなふうに蹂躙されていくさまを見るのは、とても悲しい。