いやはや驚いた。
あまりに突然のニュースだったからだ。
驚いたのは僕だけじゃない。各紙の報道に寄せられたコメントによると、関係者にも多くの波紋を呼んでいる。
「唐突な形での発表。このような進め方は、多くの課題を残す。都民をはじめ、多くの関係者に対する十分な説明を求める」(小池百合子・東京都知事)
※毎日新聞
「寝耳に水。情報収集して今後の対応を見極めたい」(横川浩会長・日本陸連)
※日刊スポーツ
しかもこれは、単なる《検討案レベル》の話ではなく、ほぼ決定ではないかという報道も出ている。
記事によると、マラソン・競歩のコース変更は、IOCのトーマス・バッハ会長が、かなり強い意向を持っているようだ。
そしてそれは、どうやら、先日ドーハで開催された世界選手権の女子マラソン結果を踏まえてのものらしい。
ドーハでの女子マラソンは、異例の深夜スタートで実施されたにもかかわらず、気温30℃超、湿度70%以上での開催となり、なんと、出場者の4割超が途中棄権という異常事態となった。
真夏の東京では、たとえ早朝であっても、「気温30℃超、湿度70%以上」になることが十分あり得るから、IOCが危惧するのも当然と云える。
マラソンと云えば、オリンピックの看板種目。
それが、開催地である「東京」ではなく、「札幌」で行われるというのは、とてつもなく奇妙で、大きな疑問。
マラソンが開催都市で実施されないとなると、1896年アテネ五輪からの近代五輪32回目で初のこととなるようだ。
オリンピックでのマラソン大会は、ランナーの姿とともに、街の情景が、2時間あまり世界に発信される。
だから、東京の街を世界にPRする場でもある筈。
札幌も素敵な街ではあるけれど、「東京」オリンピックのマラソンで、札幌の風景が世界に発信されるというのは、ちょっと違和感を感じる。
しかし、それほど特別な対応をしないと、酷暑の時期に日本でマラソンを実施するというのは、厳しいということなのだろう。
真夏の札幌は、そのイメージほどは涼しくない。
札幌でのマラソン大会と言えば、毎年8月下旬に開催される北海道マラソンが頭に浮かぶが、参加にあたっては、このような誓約書にサインしなければいけない。
北海道マラソンは、炎天下で行われる非常に過酷な大会です。下記内容をよく読み、同意の上、ご参加をお願いします。
しかも、オリンピックでのマラソンは8月上旬だから、北海道マラソンよりもさらに暑い時期での開催となるのだ。
だから、たとえ札幌開催といえど、猛暑の抜本的な解決策にはなっていないような気がする。
北海道マラソンのスタート時刻は午前9時であるのに対し、オリンピックでのマラソンは、午前6時スタート*1なので、かなり事情は異なるだろう。
また、札幌は、たとえ東京と同じ気温であっても、湿度が低いため、かなりすっきりと感じる。
前述のドバイでリタイアが続出したのは、《高温多湿》であったことが大きな原因だから、多湿ではないことは、大きなメリットとなる。
ランナーにとっては、少なくとも東京開催よりはマシなので、選手ファースト、で考えれば、やむを得ない変更であるとも思える。
ただ…僕が言いたいことはただひとつ。
今更かよ!
ということだ。
真夏の東京が暑いのは、今に始まったことではない。そんなことは、オリンピック招致前からわかっていたこと。
本当に選手ファーストで考えるなら、前回の東京五輪のような秋開催に変更するのがベストだった。
にもかかわらず、これまでは、真夏の東京でマラソンを強行しようしていた。そのために、東京都の予算もかなり使った筈だ。
開催まで1年を切ってから、IOCの圧力がかかると、唐突に開催地を変更(しかも、東京都知事にも知らせずに!)するというのは、如何なものかと思う。
もしも札幌に変更となったら、さまざまな問題が生じる。
- マラソン観戦のチケットを購入した人はどうなる…?
- ボランティアも選び直し…?
- MGC*2はいったい何だったんだ?
調整しなければならない課題は山積みだ。
東京オリンピック開催決定の時点で、マラソンや競歩だけは、猛暑対策のために札幌で行う、ということが決まっていれば、話は違ったと思うけれど…。