昨日はひどい天気だった。
各種の気象ニュースで、あらかじめ警告されていたとは言え、想像を超えるレベルの雪。いやはや凄かった。
この程度でひどいとか凄いとか言っていると、雪国の人には笑われると思う。
しかし、環境の違いというのは恐ろしい。人間もシステムも、慣れていないことには、どうにも弱いのものなのだ。
都心部の積雪は、4年ぶりに20cmを超えた。
案の定、都心部を支える交通システムは、この特異気象に耐えられず、大混乱に陥った。
大幅な遅延、入場制限、さらには、運転休止、など、など、など。
同僚の中には、帰宅困難に陥った人もいるほどだ。
ただ、僕は、昨日、ひとつの作戦を考えていた。
まさかここまでの積雪になるとは想定していなかったが、ある程度雪が積もることは確実だったから、「できるだけ交通システムに頼らず、歩けるところは歩いて帰ろう」と思ったのだ。
そう、僕には、これがあったからである。
スノーターサー。
僕の愛するレーシングシューズ、ターサーシリーズの雪道モデル。僕はこれを、4年ぶりに活用させようと思ったのだ。
4年前。
27cm降り積もった日のことは、今でも鮮明に覚えている。
あの年は、恐ろしいことに2週連続で27cmの雪が降ったのだけれど、僕がはっきりと覚えているのは、1回目のこと。
あの時は、土曜日に大雪が降り、翌日曜日は、朝からすっきりと晴れたため、僕は、荒川河川敷に遠征した。
それまでお蔵入りになっていた「スノーターサー」をデビューさせるには、もってこいだと思ったからだ。
その思惑は、見事に的中。
僕は、新雪の上を、快速シューズのスノーターサーで走りまくれることが嬉しくてたまらなかった。
雪上ランで最高の気分になり、気がつけば、キロ6分ペースで12km。夢のような体験だったことを思い出す。
その後、東京でも何度か雪は積もったけれど、あれほどのレベルに至ることはなかった。
また、夕方から降り積もって夜には固まっていることもあったので、そうなると、雪は危険なアイスバーンに変化。
スノーターサーは、あくまで「雪上用」のランニングシューズであり、アイスバーンには向かない。
だから、またしても、僕のスノーターサーはお蔵入りになっていたのだ。
ただ…。
昨日は、昼過ぎから夜まで雪が降り続く予報になっていたため、僕は、帰宅時にスノーターサーが活用できるんじゃないかと思った。
ということで、このシューズを持参して出社。
午後以降、想像を超える雪の状況に不安が募りながらも、どうすることもできず、時刻は夕方に。
ようやく定時を超えた頃には、各種交通規制の情報が流れ込んできた。
特にターミナル駅は大混雑、大混乱で、入場規制までしているとの情報だった。
僕は、平時でも、ターミナル駅の人混みが大嫌いで、最近は、それを避け、できるだけ電車に乗らないようにしていた。
幸い、僕の家から会社は、歩いても1時間はかからない距離。
今は、ランニングが思うようにできない身体だから、運動不足をウォーキングで補う意味でも、一石二鳥だったのだ。
ということで…。
僕は、革靴をスノーターサーに履き替え、行けるところまでは歩いて行こう、と思った。
大雪で乱れまくり、ごったがえす交通網を避け、悠々自適に、雪の中を歩いて行こう。そう思いながら、会社を出た。
今から考えれば、その作戦が…。
大甘だった。
僕は、歩き始めてたった10分で、自分の決断が間違っていたことを思い知る。
雪に慣れていないのは、交通システムだけじゃない。僕の身体も同じだったからである。
スノーターサーは、雪を完全に弾いてくれるので、足下については、全く問題ない。
だから、スノーターサーは、十分その役割を果たしてくれた。
しかし、雪の日に辛いのは、足下だけの話じゃなかったのだ。
昨日の帰宅時間は、まだ雪が降りしきっていて、しかも、歩き始めたころからだんだん、その勢いが強くなってきていた。
そんな中、僕は、スーツ&コートスタイルで、傘をさしながら歩いていたのである。
容赦なく身体に襲いかかる雪に、僕の身体はだんだんと凍えてきた。
そもそも、よく考えれば、降りしきる雪の中、写真を撮って歩こうと考えることがバカすぎる。
写真を撮るために、手袋も外したりしているので、手がかじかんで、さらにつらい状況になった。
確かに、ブログのネタになるかもしれないとは思ったが、こうなると病気だ。
しかし、それはあとから思ったことで、この時の僕は、なぜか妙な義務感(なんの義務だよw)に襲われて、無性にシャッターを切っていた。
結局…僕の帰宅作戦は大失敗。
僕は20分歩いた地点で心が折れて、交通システムに頼ろうと思った。
しかし、ショートカットルートで歩き始めてしまったため、いつもの駅を使うことができず、やむなくバスに乗車。
延々と待たされた上、のろのろ渋滞&大混雑に巻き込まれた。さらには、駅もバスもないような場所から、1km以上も歩く羽目に。
いやはや、たった1kmの道程が、まさかこんなに長いとは思わなかった。
スノーターサーのおかげで、足下だけは不安がなかったけれど、家に帰り着く頃には、身も心もボロボロになっていた。
今から思えば、僕の作戦は、あまりに中途半端だった。
スノーターサーは、あくまでランニング用のシューズ。これを履いて帰るつもりならば、スーツやコートじゃなく、ランニングスタイルで、走って帰宅するべきだった。
スノーターサーだけじゃなく、防寒用のランニング装備を用意して出社するべきだったのだ。
しかし、そんなことを今更言ってもあとの祭り。泡沫ブログのネタにしかならない。
本当に僕は大馬鹿だ。