今日12月16日は、個人的に、どうしても見過ごせない記念日が2つある。
そのうち、「電話創業の日」については、3年前に熱く語った。
だから今日は、もうひとつの気になる記念日について語ろう。
僕らの生活にとって、なくてはならない《紙》の記念日なのだ。
電話創業の日は1890年、紙の記念日は1875年に制定。
奇しくも、この2つの記念日は同時代に生まれている。
しかし、「紙の記念日」は、「電話創業の日」と異なり、紙が生まれた日に制定されたわけではない。
紙そのものは、中国で紀元前2世紀頃に発明され、日本には610年頃に伝来したと言われている。
1875年の今日、12月16日は、東京・王子の地で、抄紙会社(後の王子製紙)が営業運転を開始した日。
この日以来、紙が工業製品として大量に作られ、社会のインフラになっていく。
その節目を記念した日なのである。
紙が、特別なものではなく、誰の生活にも当たり前に存在するものになってから、今年はちょうど150年。
長い時間をかけて社会のインフラになった「紙」だが、ここ十年来、特にここ数年で、その立ち位置は大きく変わりつつあるように思う。
まずは、電子書籍。
ここ数年の普及はめざましく、特に雑誌やコミック分野については、紙媒体を飲み込みつつある。
紙媒体の代名詞とも言えた「本」が、今や「紙の本」と呼ばれたりする逆転現象さえ発生している。
僕は長年「本は紙で読みたい」派だったが、最近はKindleを使った読書も増えてきた。
そもそも、そういった本を書く作家の人たちを取り巻く環境も変わっている。
最近は、パソコンを使ったデジタル入稿が当たり前で、原稿用紙に手書きで書いているという作家は希有になっているようだ。
マニュアルなども、その形を変えてきた。
例えばスマートフォンなどのデジタルガジェットを買った時、以前は超分厚い「紙の」マニュアルが付属してくるのが常だった。
しかし最近は、紙が全く付属せず、Web上のPDFで確認するパターンが増えてきているのだ。
昨日から受付が始まった、日本ならではの《紙文化》と言える年賀状。
これを取り巻く環境も大きく変わった。
2026年の年賀はがきの当初発行枚数は、前年比30.1%減の約7億5000万枚。
15年連続減り続けている中で、さらに30%の減少というのは凄すぎる。
ピーク時の2003年には44億5,936万枚もの枚数の年賀はがきが発行されていたというから、それと比べるとたった16.8%(!)しかない。
郵便料金の大幅値上げという要素もあるから、一概に「紙文化の衰退」だけが減少理由とは言えないが、デジタルに移行してきていることは間違いない。
最近では、コンサートやイベントのチケットも、ずいぶん様変わりしている。
以前は、紙のチケットを持参し、会場で係員に渡して半券をもぎってもらうのが当たり前だった。
今では、スマホに表示されたQRコードをかざすだけ、というケースも珍しくない。
紙のチケットを「手に取る」機会そのものが、確実に減っているように感じる。
いやはや、時代は変わったものだ。
もちろん、今後、紙という媒体がなくなるということはあり得ない。
ただ、主役ではなくなりつつあるような気がする。
そういえば…。
「紙の記念日」のきっかけとなった抄紙会社の設立には、渋沢栄一が関わっていたという。
そう。昨年誕生した、新一万円札の顔だ。
紙を社会に広めた人物の顔が、「紙幣」という紙の象徴に印刷されているのは、
なかなか興味深い。
もっとも、その紙幣すら、キャッシュレス時代の波の中で、だんだんと出番を失いつつあるのだから、なんとも気分は複雑なのだけれど。

