今は昔。昭和の時代。
芸能界において、伝説から神話になった女性がいた。
そう。山口百恵。
三浦友和との電撃結婚を経て、引退を決めて以来、表舞台から完全に姿を消してしまった、昭和最強のアイドルだ。
芸能人は、たとえ結婚→引退しても、気がつくといつの間にか芸能界に戻っていたりするのが常なのだけれど、百恵さんは、違った。
人気俳優の妻として、或いは、母親になった時、そして、息子たち(三浦祐太朗/三浦貴大)がデビューした時、等々…。
さまざまな転機においても、彼女は、一切、芸能界に復帰することはなかった。
復帰しようと思えば、いくらでもチャンスはあった。オファーの数は計り知れなかった筈だ。
親友であるアン・ルイスに、作詞提供(ラ・セゾンなど)をしたことはあったけれど、メディアへの登場は、頑なに拒んだ。
だから、僕の心の中にいる百恵さんは、今でもあの時の姿のまま。
美しい、可憐な、アイドルとして存在している。
まさに、伝説、神話になったのだ。
2003年。
デビュー30周年を記念して発売された24枚組のCD-BOX『MOMOE PREMIUM』は、もちろん購入。
これは、今でも僕の大切な宝物。
このBOXには、豪華な写真集もついているため、それを眺めながら歌声を聞くと、最高に幸せな気分になれる。
こういった本人不在の記念企画アイテムは、引退後も数多く出ている。
しかし、まさか、《今の》百恵さんを知ることのできる本が発売されるとは、思っていなかった。
その本の名は、「時間(とき)の花束 Bouquet du temps」。
三浦百惠という著者名で、令和元年の7月に発売となる。
発売元である日本ヴォーグ社は、プレスリリースにこう書いている。
芸能界を引退してから現在までの30数年間、手仕事をずっと愛しみながら、まるで日記のように綴ったキルトの数々。
時間(とき)を大切にし、人を思う愛に満ちあふれたそれらの作品が、今、花束のような美しい1冊の本に上梓。
引退後、百恵さんが趣味としているキルトを紹介した本。
だから当然、キルト作品の写真が並ぶ本になっており、百恵さんや家族の写真などは掲載されていないようだ。
ただ、ライターによる聞き書きという形で、百恵さん自らの「作品にまつわるエピソードや、製作の舞台裏」も紹介されているとのこと。
また、著書のあとがきには、このようなメッセージが書かれていることが明らかになった。
今、暮らしの中に手仕事の時間があることをとても幸せに思っています。
これを読むだけで、僕は胸が熱くなる。
たとえ芸能界の表舞台に出てこなくても、今の百恵さんは、とても幸せに、キルトを紡いで生きているのだなぁ…。
昭和55年。
百恵さんの引退直前に発表され、300万部の大ベストセラーになった「蒼い時」。
それから40年もの月日が流れた。平成という時代をまたいで、元号は、令和に変わった。
そんな時に、まさか、百恵さんの新刊が発売されるとは思っていなかったので、青天の霹靂だ。
前述の通り、これはあくまでキルト本であって、エッセイ集でも写真集でもない。
だから、期待しすぎてはいけないと思うが、でも、《今の》百恵さんの新刊が出る!というだけで、本当に嬉しい。
Amazonではまだ予約が開始されていないが、楽天ブックスでは予約可能。
僕は、キルトについて全く無知だし、興味もそれほどないのだけれど、百恵さんの本となれば別。もちろん購入するつもりだ。
作品の向こう側で、幸せに生きている筈の百恵さんを、思い描きながら読んでみたい。