「旅」に出たくてたまらない。
今は、《Stay Home》が求められているのだから、もちろん、旅どころじゃないことはわかっている。
ただ、抑制されれば抑制されるほど、我慢すれば我慢するほど、旅への思いは強まっていく。
旅に出られない鬱憤は、旅について語ることで晴らそう。
旅ランについての思いは、昨日のエントリーで詳しく書いた。
僕は、「世界のマラソン ベスト50」を読みながら、いつかまた、旅ランができる日を夢見ているのだ。
ただ、僕は、子どもの頃から旅が好きなわけではなかった。
どちらかと言えば出不精で、海外旅行に初めて行ったのも、社会人になってからのことだったと思う。
僕を、海外への旅に目覚めさせてくれたのは、この本だった。
沢木耕太郎の「深夜特急」だ。
数多ある《旅本》の中でも、不朽の名作として名高い超ベストセラーなので、今更、ストーリーを紹介するのも野暮な気がする。
ただ僕は、旅について語るなら、この本のことを語らずにいられない。
これは、「インドのデリーから、イギリスのロンドンまでを、バスだけを使って一人旅をする」という目的で日本を飛び出した男の物語で、著者沢木耕太郎自身の旅行体験に基づいているという。
いやはや、その内容に僕は痺れまくった。
単行本は、第一便から第三便までの3冊で構成されており、当時、僕は、発売済みだった第一便と第二便をまとめて購入した。
第一便では、デリーの情景をプロローグに添えつつ、《香港~シンガポール》の行程を綴っている。
主人公が旅の出発点として考えていたのは、インドのデリーだったのだから、そこまでの旅は、あまり盛り上がらないんじゃないか?と思いながら読み始めてみて…驚愕。
いやはや、なんて面白い本なんだ、これは!
さりげないエピソードも、ドラマチックな事件も、全てを鮮やかに書き綴っていて、本を読む手が止まらない。
あぁ、これこそが旅。次に何が起きるのか、全く予測のつかない、まさにそれが旅の素晴らしさなんだ。そう思った。
第二便に入っても、その興奮は増すばかり。
とりわけ、インドの章は、まさに「旅のクライマックス」と言えるほど、僕は痺れまくった。
しかし…僕はここで大きなショックを受ける。
続く第三便が、いつまで経っても発売されなかったからである。
第一便の巻頭には、第三便の目次(予告)まで掲載されているにも関わらず、だ。
これは後で知ったことなのだが、第一便と第二便は新聞連載されており、その連載終了後同時刊行されていた。
しかし、第三便は《書き下ろし》となったため、そこで、著者の筆が止まってしまっていたようだ。
僕は、第二便まで読んで、「早く、早く、この先を!」「あぁぁぁ、続きが読みたい」と思い続けていたので、本当に、これはショックだった。
だから、第二便から6年後に、ようやく第三便が発売された時は、発売日ゲットして、その日のうちに貪り読んだ。
第三便では、旅の行程がヨーロッパに突入したせいなのか、月日が経ちすぎてしまったせいなのかわからないけれど、第二便ほどの興奮はなかった。
でも、やっぱりラストでは感動したし、あぁ、旅が完結して良かったと感激。
そして僕は、それ以来、東南アジアへの旅を繰り返すことになる。
今から25年以上も前…僕がまだ、ランニングに興味が無く、体重も80kg近くあった頃の話だ。
それから長い年月が流れ、僕は、アジアからアメリカに興味が移り、体重も30kg近く落ち、海外旅行は、もっぱら旅ランとセットになった。
でも、僕における旅の原点は、あくまで、この本であり、僕は、もう何度も何度も読み返している。
おそらくこれからも、一生読み返し続ける筈だ。
6分冊になった文庫版ももちろん購入したが、旅の途中で、第4巻を紛失してしまい、不揃いのまま、今は実家で眠っている。
いつかは文庫版で揃え直そうと思っていたのだけれど、今は、別途Kindle版も出ていることを知った。
電子書籍なら、文庫本と違って、旅先で置き忘れたりする心配もない。(スマホごと忘れる可能性はあるけれどw)
ということで、今度はこれを買って、また読み直すことにしたい。