今年のM-1グランプリには、僕の好きな芸人が集結した。
ヤーレンズ、エバース。そして、審査員のミルクボーイ。
それぞれの思い入れを踏まえながら鑑賞していたのだけれど、心は千々に乱れてしまった。
出番順を決める笑神籤(えみくじ)で、最初にヤーレンズが引かれた時、僕は思わず「えーっ」と叫んでしまった。
どう考えても不利だからだ。
ここ2年、令和ロマンがトップバッターを引き、そして優勝していることで、「トップバッターは、損ではない」という雰囲気ができてしまったが、それは例外中の例外。
令和ロマンは、M-1で2連覇してしまうような絶対王者なのだから別格だし、こと去年に限っては、《前年優勝者が、なんと2年連続のトップバッター》というサプライズを逆用して盛り上がった感もある。
審査員も、絶対王者の令和ロマンだからこそ、最初から迷わず非常に高い点をつけていた。
しかし通常、M-1でのトップバッター審査では、様子見の配点となることが多いから、不利であることは間違いない。
だから本当にショックだった。
今回、ヤーレンズが決勝で披露したネタは、昨年までとパターンを変えて、モデルチェンジし、磨き上げられてきたもの。
会場も大いに盛り上がっていたし、あのネタで、2点差で、最終決戦を逃したのはつらすぎる。
あぁ、トップバッターじゃなければなぁ…と思わずにいられない。
それでも、トップバッターにしては高得点が並んでいたので、最後までヤーレンズ基準で進めば、何とかなった可能性はある。
しかし、早めの4番手にエバースが登場し、完璧な漫才を見せたため、得点が跳ね上がったことも、ヤーレンズにとってはつらかった。
審査員の得点判断が「ヤーレンズ基準→エバース基準」に変わってしまった(ような気がする)からだ。
僕はエバースも大好きだから、圧倒的なトップ通過が確実となったのは嬉しかった。
しかしその反面、これでヤーレンズは厳しくなるかも…と思い、最終決戦に進めないことが決まった時は愕然。
大いに落ち込んだことを思い出す。
今回、初審査員に抜擢されたミルクボーイの駒場さんは、僕が事前に思っていた通り、さまざまな芸人たちに、温かく真摯なコメントを出されていた。
やっぱり、人柄が良いんだよなぁ。だから僕はミルクボーイが好きなんだよなぁ。とあらためて思った。
ヤーレンズに対してのコメントも(プラスマイナス含め)的確だったと思うけれど…ヤーレンズへの配点だけは、少しだけ気になった。
初審査員、初の採点となるトップバッターへの採点は、どうしても難しくなる。
ヤーレンズが、もし後半の出番順だったら、91点という得点はなかったと思うんだけれどなぁ…。その点だけが残念だ。
ただ、そんな「たられば」を言っても詮ない。
本戦の話に戻ろう。
最強の漫才で魅せたエバースの後、決勝常連で、今回こそと思われていた真空ジェシカの点数も思ったより伸びなかった。
ヤーレンズより1点上回っただけ。出番順を考えれば、順位が逆であっても不思議はなかったと思う。
それでも、前半5組が終わった時点では、「エバース」→「真空ジェシカ」→「ヤーレンズ」となっていたため、なんだかんだで、常連《3強》が進むのか、という思いもあった。
しかし。
M-1の舞台は、そんな単純な展開では終わらない。
新星の「たくろう」と「ドンデコルテ」が、大爆笑を巻き起こす。
ヤーレンズのみならず、真空ジェシカをも飲み込んで最終決戦へ。
《斬新さ》と《勢い》が、《安定感》をまくりきったのだ。
しかも、その《斬新さ》と《勢い》は、最終決戦でもまだ続いていた。
ドンデコルテ渡辺銀次さんの「ちょっとおかしな演説キャラ」は、1本目に続いて光っていたし、なんといっても、たくろうのキャラ漫才が最高すぎた。
「おどおどした雰囲気を醸し出す赤木さんが、あたふたしながらおかしなことを言う」という設定が素晴らしいし、決勝1本目と同じ展開なのに、それを超えてくる2本目が素晴らしすぎた。
その結果…。

たくろうがぶっちぎった!
まぁ、会場があれだけ盛り上がれば、これは文句なし。
キャラ漫才がピタリとハマってのド圧勝だ。
まさかエバースに1本も入らないとは思わなかったけれど、それぐらい、決勝のたくろうは抜けていた。
エバースは、決勝1本目があまりに素晴らしすぎたため、「あれと比べると…」と思われてしまったような気もする。
ということで今回のM-1は、新星のたくろうがド圧勝というドラマティックな結末で幕を閉じた。
ヤーレンズ、エバースが好きな僕としては、ちょっと残念ではあったけれど、さまざまな形式の漫才を見られて、今年も奥深い大会だった気がする。
だからM-1は面白い。

