閑静な住宅街の中に、その店はひっそりと存在していた。
年期が入った木製の戸に、くたびれた暖簾が無造作に吊されている。
そして、餃子推しのミニのぼり。
その佇まいだけで、僕はもうメロメロだ。
入口にあるショーウインドウが、これまたたまらない。
メニューの書かれた紙の前に、謎の置物がズラリと並んでいる。
メニューの説明や値段が見えにくくなっているし、どう考えても邪魔なのだが、なんだかほのぼのとした気分になってしまう。
近寄って眺めてみると…。
餃子には、手作りと書き添えてあり、自慢のメニューであることがわかる。
その脇には、大人気・やみ…と書かれているが、その後がわからない。どうしてそこに猫を置くかなぁ…。
まぁ、たぶん「やみつき」だろうと思うが、米国生まれの猫が「ヤミー(yummy:美味しいの意味)」と言っている設定なのかもしれない。(違うだろw)
いずれにしても、これはかなり期待できそうだ。
入店。
店内は、4人掛けのテーブル2つと、3人掛けの円テーブルが1つの、コンパクトな造り。
決して綺麗とは言えないし、雑然としているのだけれど、それがまた昭和感を醸し出していて、悪くない。
いや。むしろかなり素敵だ。
そのレトロな雰囲気が買われて、映画やドラマのロケ地としても使われているようだ。
僕はどちらの作品も知らなかったが、amazon Prime Videoラインナップにあったので、今度見てみようと思う。
痺れたのは、壁に掲げられていたメニュー表。
ラーメン400円!チャーハン480円!
500円以下のメニューが中心となっており、最も高いカツカレーでも700円。
いやはや安い。まるで、価格も昭和にタイムスリップしたかのようだ。
お得なセットメニューも用意されている。
半ラーメン、半チャーハン、半焼肉丼、半カレー丼などを加えたセットメニューも充実している。いやぁ、素晴らしい。
僕は、手作り餃子を注文することは決定していたが、それに加えて、何を注文しようか迷った。
…すると、《ニラ玉炒めライス》というメニューがあることを発見。
一品料理の中に「ニラ玉」というメニューがなかったのだけれど、定食メニューにあるなら、単品で注文もできる筈。
ニラ玉は、中華料理の中で、餃子の次に好きなメニューなので、それがあるなら決定だ。
ということで、まずはニラ玉を注文。
そしてもちろんビールを頼んだ。
老齢の女将さんは、僕の注文を聞き、店の奥でゆったりと料理を作り始めた。
なんともノスタルジックな雰囲気がたまらない。
いやぁ、良いぞ。かなり良い。
僕は、そんな思いを抱きながら、店のムードに酔っていると、意外なビジュアルのものが、目の前に運ばれてきた。