池袋駅から徒歩10分程度。
川越街道からちょっとだけ脇道に入ったところに、その店は、さりげなく存在していた。
店の名は「香港屋」
手書き文字の看板が、いやはやなんとも味がある。
店頭では、惣菜類を販売しており、弁当という文言もあるので、基本的にはテイクアウト店という位置づけなのだろうか。
店の名前は《香港屋》なのだけれど…。
提供しているのは、どうやら台湾料理のようだ。
それなのに、いったいなぜ香港屋なのだろう。僕はちょっと気になった。
案内板の文字も、全て手書き。
人によっては抵抗を感じるかもしれないが、僕は、かなり好感を覚える。
「日本語を頑張って勉強して書きました」という思いが伝わってくるからだ。
店頭のショーケース(?)には、台湾料理らしきものが並んでいた。
品名が書かれていなかったので、ケース上にあった春巻以外は、詳細不明w
マンゴーてんこ盛りだという台湾かき氷も取り扱っているようだ。
店頭には、「当店料理長は、以前名古屋でテレビの取材を数回受けました。味に自信あります。」というメッセージと、それを証明するための写真や名刺が掲示されていた。
店主は台湾出身の料理人ということだが、写真の店は、この店とは結構違って高級中華料理店と言った雰囲気。
名古屋でいったい何があって、なぜここにこの店を…?と思わずにいられない。
入口には、「店内飲食可。消毒済」という表示も出ていた。
ならば、飲食をさせてもらおう。ということで、入店。
店内はかなり狭く、僕が座ったテーブルひとつだけ。定員2~3人といったところだろうか。
これは確かに、飲食店というより、店内飲食《可》という表現の方が正しいなぁと思った。
席にメニューがなかったので、聞いてみたところ…。なんと、外にあるという。
ということで、店に入ったばかりなのに、再度外へ。
これらの料理が可能…ということだったのだが、一連の料理はケースや冷蔵庫の中に用意されていた。
どうやら、それらが温め直されて出てくるようだ。
いつもそうだと言うわけではあるまいが、温め直しはちょっと…と思ったので、僕は、仕方なく餃子だけを注文することにした。
餃子も温め直しかなぁ…という危険性があったが、今更退店するわけにもいかず、覚悟を決めることに。
再び席に座って待っていると、フライパンに油が引かれ、餃子が並べられていたので、ちょっとホッとしたのは内緒だ。
餃子を注文する以上、ビールは絶対に欠かせないので、焼き上がりに合わせて出して貰うことにした。
10分程度待ったろうか…。
待望の焼餃子が出てきたのだけれど、僕は、そのビジュアルにちょっと驚いた。
一見、ビールにぴったりの美しい焼き色という気がしたのだけれど、よく眺めてみると…。
えっ。
なんでタレがかかっているんだ?台湾餃子ってこんなだったっけ?
僕の戸惑った表情を見て店主は、「焼餃子は味がついてますから、そのまま食べられます。」と言った。
いや、味がついてるというか何というか…タレがかかっているんだから、そりゃぁ、そのまま食べるしかないじゃないか!
僕は、そんな思いを抱きながら囓ってみた。
ん?
意外にこれは悪くないぞ。いや、むしろ結構いい。
肉がぎっしり詰まって食べ応えがあるし、ちょっとだけ甘辛なタレが、その具にぴったりと合う。
皮は揚げ焼きと言った感じなので、ちょっとだけ油っぽいのだけれど、それに伴うしつこさを、タレがうまく和らげてくれているような気がする。
この餃子にはこのタレが不可欠なのだ、きっと。
食べ応えのある餃子が6個で380円という価格にも驚いた。ビールと合わせても1,000円を切るので、なかなかリーズナブルだ。
店の雰囲気も悪くなかったので、僕は、再訪することを決意した。
その時は、タレの秘密について店主に確認してみることにしよう。
あと、なぜ台湾料理屋なのに、香港屋と名乗っているのかも聞かなくちゃw