先週末に鑑賞。
TVドラマ「シャーロック」にハマって以来ファンになった、ベネディクト・カンバーバッチ主演ということで、期待して見に行った。
映画の舞台は1962年。あの「キューバ危機」が発生した年。
ソ連が、アメリカの隣接国であるキューバに、核ミサイル基地を建設していることが発覚し、米ソ感の緊張が高まり、核戦争寸前まで達した事件だ。
この物語は、そんなキューバ危機を目前にして、スパイ経験など全くない英国人のセールスマンであるグレヴィル・ウィンが、突然、ロシアに送り込まれるという実話に基づいている。
僕は、キューバ危機の裏で、そんなことが起きていたなんて全く知らなかったから、ドキドキしながら鑑賞した。
グレヴィル・ウィンの任務は、ロシアにいる《同士》のスパイと接触し、同士から受け取った機密を、西側に持ち帰ってくるということ。
いわばクーリエ(運び屋)だ。
ウィンのロシア訪問目的は、表向き「商売のため」ということになっており、ロシア内では、実際にバリバリのセールスを行っている。
だから、当局に疑われず、軍事機密を持ち出せるという設定。
そんなやり手のセールスマン、グレヴィル・ウィンを演じるのが、ベネディクト・カンバーバッチ。
びっちりとなでつけた髪、整った口ひげ、そして、きっちり決まったスーツ姿は、実にダンディでスマート。
デキる商人といった趣で、まさに、カンバーバッチのハマり役だと思った。
ただ…。
ロシアとの往来を繰り返すうち、ウィンにも恐怖が募ってくる。
いくら自分が、軍事機密に「直接」関与していないとはいえ、発覚次第、処刑されることは間違いなく、そのことに気がついてからは、苦悩することとなる。
スパイになったということは家族にも明かせないから、その苦悩は実に深刻だ。
物語は、緊張感を高めながら、ミステリアスに進んでいく。
僕は、いったいどういう展開になっていくのだろう…と思いながら鑑賞していたが、ラスト20分間あたりで、衝撃が訪れた。
ある程度予想された展開ではあるのだけれど、ベネディクト・カンバーバッチの演技が想定を超えており、「えっ、えっ、えっ、そこまでやるか?!」と思ってしまったのである。
ネタバレになるから、詳しくは書かないけれど、カンバーバッチのファンならば、間違いなく、大きな衝撃を受ける筈だ。
僕は、何もそこまでやらなくても…と思ってしまったほど、鬼気迫るものがあった。
その緊迫感は、鑑賞から何日も軽快した今でも、未だに僕の脳裏に焼き付いているほど。
派手なアクションシーンなどはないが、スパイ映画として、実によくできている。
ベネディクト・カンバーバッチが見せた「本気の役者魂」を味わうだけでも、この映画を見る価値はあると思う。
お薦め。