待ちに待った本が届いた。
村上春樹先生の最新エッセイ集だ。
今回は、「クラシック・レコード」がテーマ。
これまで、ジャズに関する村上エッセイ集は何冊も発売されているが、クラシックについて書かれたものは、この本が初めてになる。
しかし、その気合いの入りっぷりは半端じゃない。
雑誌連載をまとめたものなどではなく、なんと、全編書き下ろしというのだから、素晴らしいではないか。
クラシックに興味がない、詳しくない、という人でも問題ない。
この本は、クラシックに関する本格的な論評本というわけではなく、あくまで、クラシックをテーマにしただけの、《村上エッセイ》だからだ。
全100編に及ぶクラシックレコード・エッセイ集の巻頭に添えられた序文(なぜアナログ・レコードなのか)が、この本の内容を表している。
つまりこれはあくまで個人的な趣味・嗜好に偏した本であって、そこには系統的・実用的な目的はない。
「これがこの曲のベスト盤だ!」みたいなガイドブック的意図も皆無だし、「私はこんな珍しいレコードを所有しています」とひけらかすことが目的でもない(実のところ、そこまでの専門的知識を僕は持ち合わせていない)。
たまたま買い込んだレコードの中で、個人的になかなか気に入っているものを棚から引っ張り出してきて「ほら、こんなものもありますよ」とお見せするだけのものだ。
村上春樹先生が、お気に入りのクラシックレコードを厳選し、それについて、好きなように語るエッセイ。
いやぁ、もう、面白いに決まっている。
実際、その内容は、想像以上に素晴らしかった。
なんと、合計486枚にも及ぶクラシック・レコードに関するエッセイが、素敵なジャケット写真とともに、綴られているのだ。
僕は、クラシック音楽には全く疎いのだけれど、読み進めていると、脳裏にその音楽が響いてくるようで、心地いい。
やっぱり、村上春樹先生のエッセイは最高。
その価格は2,530円もするので、ちょっと高いように思うかもしれないが、内容の圧巻ぶりを考えると、決して損はしないと思う。
ハルキスト、必読必携。特に、村上エッセイファンには見逃せない1冊だ。