その店の名は、「庚猿」。こうえん、と読む。
ちょっとした難読漢字だと思うのだけれど、地元の人ならば一瞬で読める。
この店の住所は西巣鴨だが、すぐ近くには、巣鴨庚申塚(すがもこうしんづか)があるからだ。
「庚申塚」の「申」は、十二支の「さる」を意味し、巣鴨庚申塚には、猿田彦大神が合祀されている。
だから、「庚猿」という店名は、まさに、地元に根づいたものなのである。
この店は、都電荒川線の「新庚申塚(しんこうしんづか)」駅から徒歩1分の場所にあるが、マンションの1階に、さりげなく存在しているため、なかなかの穴場だ。
僕は、何度もこの近くを通ったことがあるのだけれど、その存在に全く気がついていなかったほど。
今回、地元の知人から推薦されたので、Googleマップを頼りに訪れてみると、「こんなところにあったのか」と驚いた。
僕は、隠れ家を見つけた気分で入店。
店内は、4人掛けのテーブル2つと、カウンター数席のコンパクトな店だ。
メニューを眺める。
税別ではあるが、ラーメン450円、餃子も350円なので、かなりお手頃価格。
ビールも大瓶で500円だから、安い。
ちょっとしたつまみがあるのも嬉しいところで、僕は、とりあえず枝豆とキリンビール(大)を注文。
ビールには、青菜が無料でついてきた。嬉しい。
枝豆は、茹でたてで提供。塩の載り具合も十分で、ビールによく合う。
僕は、メインディッシュである餃子を注文する前に、何か1品を…と思い、少し迷って、ニラ玉炒めを注文することにした。
僕は、ニラ玉が大好きなので、餃子プラスワンだと、ニラ玉炒めばかり頼んでしまうw
ただ、ちょっとした不安もあった。
この店のニラ玉は、野菜炒めの延長っぽいものが出てきそうだったからである。
僕が大好きなニラ玉炒めは、その名の通り、ニラと玉子が主役のもの。
例えば、こういったイメージのニラ玉だ。
ニラと玉子の華麗なハーモニー。至高のマリアージュ。いやはらたまらない。
しかし…。
店によっては、ニラ玉炒めといいながら、「主役はもやしなんじゃないか?」というようなものも存在する。
それはそれで悪くない料理なのだろうが、僕の好みとはちょっと外れる。
そしてこの店は、そういったタイプのニラ玉が出てきそうな予感がしたのだ。
そう思った根拠は、メニューの価格設定。
- 野菜炒め:450円
- ニラ炒め:500円
- ニラ玉炒め:550円
- 肉野菜炒め:600円
このパターンで値段が設定されている場合、野菜(+ニラ)(+玉子)(+肉)炒めという形で、作られるケースが多いからである。
逆に、「純ニラ玉炒め」を提供している店では、野菜炒めとニラ玉炒めは、同価格(或いはニラ玉の方が低価格)で提供されていることが多い。
これは、ニラ玉注文歴数十年の僕による、独自調査にもとづく研究結果だw
だからちょっと不安はあったが、でも、やっぱり僕はニラ玉が好きなので、初志貫徹して注文。
僕は、カウンター席で、ニラが刻まれる音を聞きながら、どのようなニラ玉炒めが出てくるのだろうと期待した。
ちょっとした不安はあったものの、それが杞憂になることを信じた。
待つこと10分程度だろうか…。
果たしてそれが、僕の目の前にやってきた。
不安的中orz
ニラ玉注文歴数十年の研究結果はダテじゃなかったw
ある程度予想していたとはいえ、僕は愕然、そして落胆したが、とりあえず食べてみると、これはこれで悪くなかった。
個人的に、「ニラ玉炒め」とは認めたくないが、「ニラ玉入り野菜炒め」と考えれば、これまで食べてきたものの中では、かなりレベルが高かったからだ。
肉も入っていて食べ応えがあったし、野菜のシャキシャキ感も、ビールに合う濃い味つけも悪くない。
僕は愕然としながらも、「この店は、きっと何でも美味しいのだろうな」と思った。
だからもちろん、その後出てくる主役に、期待をせずにはいられなかった。