都電荒川線(東京さくらトラム)の向原駅から、徒歩30秒。
情緒溢れる佇まいで、その店、「千葉家」は存在していた。
池袋や大塚にも近い立地であるため、僕は、この店の前を通ることが多かった。
僕が、日本一旨いと思っている「東亭@東池袋」の餃子を、会社帰りにテイクアウトする際、その途中に存在していたからだ。
店頭に掲示されているメニュー表が、僕の興味をそそった。
おすすめメニューの中にある、「餃子(手打ち)」の表示だ。
わざわざ(手打ち)と書くぐらいだから、美味しいに違いないと思ったのである。
ただ、その価格が引っかかって、訪問は二の足を踏んでいた。
600円という価格は、餃子にしては相当高い。ボリュームたっぷりで、かつ、日本一美味しい東亭餃子(530円)より高いのだ。
だから、気になってはいたものの、なかなか訪れる機会はなかった。
ただ、最近は新規の町中華を開拓しようという思いが強く、しかも、禁酒令がまたしても施行されることになったため、その前に訪れておこうと思った。
ということで、禁酒令再発例直前の週末に訪問を決めた。
入店。
開店早々に訪れたため、店内はまだ閑散としていた。カウンター席はないようだったので、片隅のテーブルに座る。
テーブルに座るや否や、冷奴が出てきたので、勢い、ビールを注文。
まぁ、もともと注文するつもりだったんだけどw
僕の後に入ってきた客の状況なども確認したところ、誰に対しても、着席と同時に冷奴が出てくる仕組みになっていたので、酒類の提供とは関係ないサービス品のようだ。
メニューを眺める。
麺類やご飯類の部。かなりバラエティに富んでいる。
麺類の中には、「ホルモンそば(レバー)」や、「辛みそとろみラーメン」といったような、珍しいものもあった。
ただ、僕はここでがっつりと麺やご飯を食べるつもりはなかった。
ということで、裏面を見る。
一品料理の中にある、餃子(手打ち)。
この日は、他の店にも行く予定があり、餃子の値段も高いため、これ1本に絞ることにした。注文。
待っている間、店内をつらつらと眺めていると、これが目に留まった。
巨人軍の原監督による直筆メッセージだ。
単なるサイン色紙のようなものだろうと思っていたが、カメラを望遠モードにして文字を確認してみると、そうではないことがわかった。
「今日負けたって泣いている暇はない。悔しさを忘れず明日勝つために前進しよう。」
「味.量.情が売りの千葉家さんへ」
かなり熱いメッセージが書かれていたからである。
原監督と関係のある店なのだろうか?
そんなことを思っていると…。
焼餃子がやってきた!
その瞬間、僕は大いに驚く。
まるで、できたての水餃子のように、もうもうと湯気がたっていたからだ。
非力なカメラと拙い撮影技術のために、この写真ではそれが全く伝わらないのが惜しい。
表面だけ見ると、それほど特徴のある餃子には見えないのだけれど、裏返してみると…。
皮のもちもち感が半端じゃない。
流石「手打ち」と、わざわざ謳うだけの餃子だ。
まさに今、手打ちして、そのまま蒸し焼きしたようなみずみずしさを、僕は感じた。
囓ってみると、その印象はさらに強烈。
もっちもちにもほどがある!
と言うぐらいの、強烈なもちもち感。
僕がこれまで食べてきた焼餃子の中では、ベストに近いぐらい、「皮」の存在感が大きい餃子だ。
皮を噛みしめると、中から肉汁があふれ出し、口内で、皮とのマリアージュを繰り広げる。いやはや旨い。これは旨い餃子だぞ。
僕は常々、餃子は、小麦粉による皮が命だと思っていて、だから、「手羽餃子」とか「餃子味」とか、皮の存在を無視した餃子は認めない。
そんな僕にとって、小麦粉の存在を心ゆくまで味合わせてくれる、この餃子の味は格別だった。
これならば、600円でも納得だ。
僕は、思わず追加でもう1皿注文してしまったぐらい、気に入った。
僕は、2皿目の餃子も、湯気たっぷりで出てきたことに感動し、至福に酔いしれながら完食した。
この店の餃子は、とにかく皮が凄いので、見かけよりも食べ応えがあり、お腹にずしんとたまる。
そのため、このあと他の店に行く予定も中止にしてしまったほど。
コスパ的には微妙だけれど、他では味わえないタイプの餃子だけに、わざわざ食べに行く価値はある。
忌まわしい禁酒令が開けたら、ぜひまた訪れたい。