鑑賞から数日経った今でも…まだ、映画の余韻が残っている。
いや、むしろ、その感動が増幅している気がする。
それぐらい僕は、この映画に痺れてしまった。
僕にとっては、実に久しぶりのロードショー鑑賞だったが、やっぱり、映画はいい、映画館は素敵だ、と思える作品だった。
この映画は、トム・ジュノーという記者が、1998年に雑誌『エスクァイア』に寄稿した、実在の記事「Can You Say...Hero?」を基にしている。
ただ、実際はかなり脚色されており、この映画にトム・ジュノーは登場せず、ロイド・ヴォーゲルという記者名に変更。
家族関係に問題を抱えた、かなり癖の強い人物という設定になっている。
但し、そんなロイド・ヴォーゲルが「Can You Say...Hero?」で取材対象とした人物は、映画の中にも実名で登場する。
それが、トム・ハンクス演じるフレッド・ロジャースだ。
フレッド・ロジャースは、アメリカの子供向け番組「Mister Rogers' Neighborhood」の司会者。
僕は、全くその存在を知らなかったのだけれど、アメリカでは、知らない人がいないぐらいの有名人であるようだ。
この映画では、癖の強い問題人物のロイド・ヴォーゲルが、フレッド・ロジャースを取材しているうちに変わっていく、というのが大きなポイントになっている。
問題のある人物が、人との出会いを通じて変わっていくというのは、よくあるテーマなので、僕は、最初、あまり感情移入もできずに、映画を見始めた。
ところが。
このフレッド・ロジャースの人間性が素晴らしすぎて、僕は、とたんにぐいぐい引き込まれてしまった。
僕は、実際のフレッド・ロジャースを知らないため、これがどこまで実話に忠実なのかはよくわからない。
しかし、確かにこんな人物がいたら、やっぱり人気者になるだろうなぁと思った。
司会者として目に見える部分だけでなく、その内面も、実に魅力的な人物として演じられていたからだ。
ということで、あっという間の109分間。
僕は、トム・ハンクスが扮するフレッド・ロジャースワールドに陶酔しまくった。
とりわけ…。
劇中、フレッド・ロジャースとロイド・ヴォーゲルが、中華レストランで会食するシーンには、思わず息を呑んだ。
ネタバレになるので、細かくは書けないが、まさに《奇蹟の1分間》があるのだ。
僕はこれまで、こんな映画を見たことがなかった。
まさにこれは、映画館でこそ、ロードショーでこそ、堪能できる奇蹟。
僕は、この1分間を味わうだけでも、見に行ってよかったなぁ、と思ったほど。
「幸せのまわり道」という邦題は、ちょっと何とかならなかったのか?という気はするものの、実に魅力溢れる映画だ。
超オススメ。