いい映画だったなぁ…。
余計な言葉はいらない。ひとこと、それで終わらせた方がいいんじゃないかと思うぐらい、酔いしれながら見た109分だった。
何より、主人公マリアを演じるヘレン・ミレンが素晴らしい。
流石はオスカー女優。エリザベス女王を演じても、こういった普通のおばあちゃんを演じても巧いんだなぁと唸った。
ライアン・レイノルズが演じる新米弁護士のランディも、もうひとりの主役ではあるが、個人的には、「ヘレン・ミレンのマリア」に心を奪われまくった映画だった。
「普通の」おばあちゃん役とは書いたけれど、もともとはウィーンの良家出身という設定。ナチス軍に、名画をはじめとした財産を奪われ、家族を奪われ、祖国を追われるようになるまでは、大富豪の娘だったわけで、その気品もしっかり伝わってくる。
元気なおばあちゃんの姿も、過去を思い出して切なくなる姿も、どちらも見事に演じきっていたのが印象的。
物語は、回想シーンが多数折り込まれ、3つの時代を行き来しながら進んでいくが、全く混乱は生じない。子供の頃のマリア、若き日のマリア。それぞれが絡みあって、映画の中の「現在」と絡まり合う。これが本当に絶妙。
若き日のマリアが逃走するシーン、そして、いくつもの法廷シーン。実話をもとにした映画だけに、その結果は見えているのだけれど、それでも本当にドキドキした。
まだまだ書きたいことはあるのだけれど、あんまり余計な情報は持たないで、無心に見た方が、この映画は絶対に楽しめる。
今にして思うと、「名画の帰還」という邦画サブタイトルさえ、ネタバレで無粋だと思うほどだ。
ナチスのシーンは頻繁に出てくるけれど、残虐なものはないし、家族を描く物語として、一級品に仕上がっている。現実のマリアとランディにフォーカスするエンドロールまで感動が続く、これぞ名作。
パンフレットは、僕が見た映画館(シネ・リーブル池袋)では売り切れ。
新宿のTOHOシネマズでも完売とのことで、渋谷まで遠征して、やっと入手できたほど。
この映画にのめり込んだなら、必ず、その舞台背景を細かく知りたくなる。だから、パンフレットが売り切れ続出なのも必然だろう。
「いい映画」を見たいと思っている老若男女、誰にでもおすすめ。