あれから、もう、10年が経ってしまったのか。
2001年9月の米同時テロ事件は11日、発生から丸10年を迎える。国際テロ組織アルカイダによるテロ計画情報で各地に厳戒態勢が敷かれる中、オバマ大統領はニューヨークとペンシルベニア州シャンクスビル、首都ワシントン郊外のテロ現場跡地を訪れ、テロ撲滅と米国再生に向けた国民の結束を訴える。
時事ドットコム:米大統領、米国再生へ結束訴え=厳戒下、11日に同時テロ10年
9月11日。
この日付は一生忘れない。あの時僕はニューヨークにいたのだ。
NY滞在の最終日。朝7時に街を散策した時は、いつもと変わらないマンハッタンの情景だった。僕は、本当に楽しかったNY旅行の記憶を反芻し、また絶対に来るぞと誓うと同時に、帰路の長い長いフライトを思い描き、ちょっと憂鬱になったりもしていた。
現地時間8時46分。
アメリカン航空11便が世界貿易センタービル・ツインタワー北棟に突入・爆発炎上した瞬間、僕は、ホテル内の部屋で過ごしていた。おそらくシャワーを浴びていた頃だったと思う。その後、9時3分にユナイテッド航空175便が南棟に突入していた瞬間は、チェックアウトの準備で旅行鞄に衣類などを詰め込んでいた頃だった筈だ。
テレビなどはつけていなかったので、NYの街で何が起きていたのか、まるでわからなかった。
帰り支度を整え、ロビーに向かうと、何だか雰囲気が変だった。フロント内外は、人で満ちあふれ、騒然としている。しかし、僕はその時でもまだ、異常事態に気がついていなかった。英語力のなさが災いし、あちこちで交わされていた会話を全く聞き取ることができなかったからだ。
長い長い行列の後、ようやくフロントに辿り着いて、チェックアウトしたい旨を告げると、いきなり「NO」と言われた。
え。
何だ何だ。単にチェックアウトをするだけなのに、「NO」っていうのはどういうことなんだ。そんな返答は想定外だ。フロントの女性は、早口で僕にその理由らしきものをまくしたてたが、僕には全く理解できなかった。
僕が全く事態を掌握できていないとみるや、フロントにいた別の女性が、シンプルな一言で、こう告げた。
「New York is closed」
と。
そして、「空港も閉まっている。日本には帰れない。そのままステイして良いから、まずは部屋に戻ってテレビをつけてみなさい」というようなことを、身振り手振りも交えながらゆっくりと僕に言い添えた。
ホテルの部屋でテレビを見た時の衝撃は、言葉で言い表せないほどだった。まさか。あり得ない。そう思った。
しかし、現実は残酷だった。
僕はあわてて街に出てみると、前日まであんな華やかだったタイムズスクエア近辺、そして五番街などの町並みが、まるで戒厳令を敷かれたかのように情景を変えていた。開いている店なんて、まるでなかった。まさに非常事態が起きていたのだ。
当時のニュース映像や、記録写真の数々を見直してみると、あらためて、あの未曾有の悲劇が鮮明に甦ってくる。このような悲劇が、もう2度と、もう永遠に起こらないことを願うばかりだ。
合掌。