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「扉をたたく人」で感じたニューヨークの光と影

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先週末、恵比寿ガーデンシネマで観賞。
現状は、上映の映画館がとても限られている*1作品で、一瞬迷ったが、見に行って良かった。今年見た作品の中では、「チェンジリング」「グラン・トリノ」と並ぶベスト級の逸品。文句なしの五つ星だ。

以下、ネタバレなしで感想をつらつらと。
僕がこの映画を見ようと思ったきっかけは、いくつかある。まずは何より、僕がこよなく愛する街、NYが舞台だったということ。NYを舞台にした映画は珍しくないけれど、「単なるロケ地」にとどまっている作品が大半だ。しかし、この映画は違う。「ニューヨークの街そのもの」が、映画の大きな主題になっている。
そして、各種映画系の口コミサイトや記事で、激賞の嵐だったことも気になっていた。名脇役で有名な老優リチャード・ジェンキンスの初主演作品でありながら、今年のアカデミー賞で最優秀主演男優賞にノミネートされたというところも、興味深さを感じた大きな理由だった。
映画のストーリーは単純だ。一言で説明すると、「愛する妻に先立たれて以来、全てに心を閉ざしていた老人が、とあるエピソードをきっかけに心を開いていく」という作品。
そう、これは、あの「グラン・トリノ」と非常に似た設定なのである。ただ、それは一言で書いてしまうからであって、もちろん実際は大きく異なる。
既に職を引退していた「グラン・トリノ」の元帰還兵に対して、この「扉をたたく人」の主人公は、現役バリバリの多忙な大学教授、という設定になっている。コネチカットで心を閉ざしていた大学教授が、出張先のニューヨークで、移民の青年に心の扉をたたかれ、大きく変貌していく。
この映画の見どころは、まさに、そこだ。
人種の坩堝、移民の街、ニューヨーク。活気溢れる世界の中心地。僕は、そんな街に憧れを抱いて、8年前に初めて出かけた。奇しくも9月11日の「あの」事件に遭遇し、華やかな地が、一瞬で暗転した瞬間を味わった。今でも忘れない。一生忘れることなどできない思い出だ。
その後、輝きを取り戻してすっかり再生したように見えたNYに惹かれ、僕は、毎年のように出かけている。しかし、僕は単なる一介の観光客に過ぎないのだ。今回、この映画を見て、僕はそのことを思い知らされた。
NYは、一介の観光客にとっては、とても過ごしやすい街だと思う。ニューヨーカーのフリをすれば、観光客扱いもされず、面倒な客引きからも逃れられる。とにかく何でも揃っているし、治安もかなり良くなって、居心地は最高だ。ただ、それは、あくまで「観光客の視点として」感じることであって、実際の移民社会はそんな生易しいものではなかった。
自分なりにある程度理解しているつもりではあったけれど、まさかここまで過酷とは。特に、あの911以降大きな変貌を遂げていたという事実に全く気づかず、毎年へらへらと観光していたことが恥ずかしくなる。
とても重たいテーマの作品だけれど、上質のユーモアも散りばめられており、息苦しくはない。ストーリーの中で、重要な要素を占めるジャンベ(アフリカン・ドラム)の響きも心地良い。
今年のNY行を前に、是非もう一度見ておこうと思っている。


映画『扉をたたく人』(原題:the Visitor)公式サイト

*1:恵比寿ガーデンシネマの他、吉祥寺バウスシアターのみ。7月中旬以降、順次拡大。


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