昨日、文化の日。
僕はふたたびここを訪れた。
世田谷文学館だ。
前回は、4年ぶりの訪問となったが、今回は3週間程度で再訪。
その理由は、もちろん…。
この展覧会だった。
展示内容の素晴らしさについては、前回訪問時に、詳しくレポートさせていただいた。
その内容は本当に素晴らしく、たった1回見たぐらいではその全貌を掴みきれない。
だから僕は、開催期間内にあらためて鑑賞する予定だけれど、昨晩、僕がここを訪れた理由は別だった。
同文学館のサロンで行われる、トーク&オークションイベントに参加するためだった。
このイベントは三部構成になっており、その第一部は、筒井先生と、ジャズミュージシャンである菊地成孔さんとのトークセッション。
イベントタイトルは、「わたしの筒井康隆」ということで、菊地さんと筒井先生の強い繋がりを示している。
恥ずかしながら、僕は、昨日まで菊地成孔さんのことをよく知らなかったのだけれど、対談が始まってすぐ、僕はすぐにファンになってしまった。
話の端々に、筒井先生への深い敬意と愛情が感じられ、かつ、裏話などが満載の軽妙なトークっぷりが、とても魅力的だったからである。
それが軽妙なのは必然。
菊地さんは、現在、民放ラジオのパーソナリティをつとめており、作家としての著作も多数。
ジャズミュージシャンとしてだけでなく、DJとしても、文筆家としても、一流の存在だったのだ。
とりわけ、冠番組のトーク内容がそのまま本になった、これは必読だと思った。
筒井先生は、対談中、この本に言及。
そればかりか、「文學界」誌(2018年3月号)で発表された作品「ダークナイト・ミッドナイト」は、これを意識して書かれたということも仰っていたため、俄然気になった。
僕は、もちろんその「文學界」を持っているので、今日、久しぶりに読み直してみた。
文學界2018年3月号
あらためて書くまでもないことだけれど、やっぱりとても面白い。
菊地さんのラジオ番組は、残念ながら今年いっぱいで終わってしまうようなのだけれど、その前に是非聞いてみたいし、番組本も読んでみようと思う。
対談前のステージ情景。
この写真で、左側に筒井先生、右側に菊地さんが座られ、トークが繰り広げられた。
対談中の撮影は禁止だったので、その姿を撮ることはできなかったが、僕は、この写真を見ているだけで、昨日の興奮が甦ってくる。
いやぁ、楽しいトークだったなぁ。
イベントの第二部は、筒井先生自身による自作朗読会。
今回、先生が読まれる作品は、「世界はゴ冗談」に収録されている短編、「奔馬菌」だった。
この作品を、僕は何度も単行本で読んでいるし、先生の朗読で聞くのも初めてではない。
4年前のイベントで聞き、最高に感動した作品だった。
あの傑作を、また、先生の声で朗読で聞くことができる!
ということで、僕は本当に楽しみにしていたのだ。
朗読が始まるや否や、僕は、その独特な作品世界にぐいぐい引き込まれていく。
物語の面白さについては、もちろんわかっているが、先生の朗読では、さらに大きな魅力が加わる。
声のトーンも、間の取り方も、抑揚も、何もかもが絶妙で、やっぱりとても素晴らしかった。
途中、空調の音が止まると、朗読の声が、凜と響くようになり、僕は、さらに引き込まれてしまった。
クライマックスでは、筒井先生が立ち上がり、アクションをつけながらの大熱演。
これは4年前のイベント時になかった趣向なので、僕はちょっと驚いたが、物語の迫力が増して、いやはや本当に最高だった。
僕は、最高のトークセッション&朗読に痺れまくったが、その余韻に浸っている暇はなかった。
このイベントには、僕にとって、大きな勝負がかかる「第三部」が控えていたからだ。