もうすぐ到着…の筈だった。
機内のディスプレイには、札幌まで54マイル、あと16分との表示。
到着予定時刻は、午後2時14分となっている。これならば、Expoをじっくり堪能できるし、前夜祭にも十分間に合う。
僕は、キャンセル待ちで早い便に乗れたことに感謝し、胸をなで下ろした。
しかし…。
そんな安心は、突然のアナウンスで吹っ飛んだ。
どうやら、「悪天候に伴い、新千歳空港が閉鎖中」とのことで、飛行機は、その手前をぐるぐると周回するようになってしまったのである。
そう、こんな感じ。
札幌はすぐそこだったのに、なんでそんなに無駄に旋回しているんだ!
あまりにもぐるぐる回っているので、僕はちょっと気持ち悪ささえ覚えていた。
SNSでの友人からの情報によると、この時間帯、新千歳空港行きの飛行機は、皆、同じ状況に陥っており、フライトレーダーで見ると、旋回する飛行機だらけだったらしい。
いやはや何とも…と思いながら、「でも、こんな近くまで来ているのだから、天候が回復さえすれば、すぐに着く。」と考えていた。
だから、無料の機内Wi-Fiなどを使って、暢気にSNSで呟いていた。
「こういう時にWi-Fiが使えるから、JALは退屈しなくていいよなぁ」とまで、思っていた。
しかし、そんな僕の考えは大甘だったのだ。
その後…。しばらくしてもまったく状況は進展せず、さらに、次のアナウンスが、僕の心を奈落に突き落とした。
「燃料搭載のため、この飛行機は、いったん函館空港に着陸いたします。」
え、え、えーっ?
いったい何なんだ、と思ったが、どうやら、ぐるぐると予定外に旋回しているうちに、搭載していた燃料が枯渇してしまったらしい。
僕は、目眩がするのを感じた。
この事態が、当初乗る筈だった15:30の便で発生しなくてよかったとは思ったものの、折角、キャンセル待ちのおかげで作れた貯金の時間が、一気に消えてしまうのではないかと危惧した。
函館空港は、悔しいくらい絶好の天気。
僕は、さっさと給油を済ませて飛び立ってくれ…と思ったが、そうは問屋が卸さなかった。
着陸しても、しばらく給油が始まらなかったからだ。
これは、あとで知ったことなのだけれど、同じ事態に陥った飛行機が多数あったため、給油も「順番待ち」になっていたようだ。
CAや機長からも、お詫びのアナウンスが入ったが、この時点では、再離陸の時刻も、到着予定時刻も通告されず、不安は募るばかり。
トイレ待ちは大行列。
CAの皆さんは、ドリンク類を配ったり、乗客からの問い合わせに対応するのに大忙しだ。
これは、同時刻のジェットスター便に乗っていた(そして、同じ状況に遭遇した)ラン仲間から聞いた話だけれど、「俺は北海道マラソンに出るんだ!受付に間に合わなかったらどうする!」とか、大声でCAに激高していた客もいたようだ。
いや、あなただけじゃなくて、みんな状況は同じなんだけれど…。と、きっと誰もが感じたのではあるまいか。
いつも思うのだけれど、こういった非常事態の時に、立場の弱い人間を怒鳴りつける輩は最低だ。
電車の遅延などでも、駅員を怒鳴りつけている輩をたまにみかけるが、そのたびに、僕は不快な気持ちになる。
怒鳴っていったいどうなる?それで何か解決するのか?
幸い、今回僕の乗っていたJAL便では、大人の客が多かった(?)ようで、そんな不快な思いをせずに済んだことは何よりだった*1けれど。
それからしばらくすると、再度、機長からアナウンスが入った。
函館空港発15時半、新千歳空港16時15分到着予定ということでメドがついたようだ。
なんだかんだで、函館空港で1時間近くのロス。その前の旋回分も含めると2時間程度のロスになってしまったが、逆に言えば、それで済んだことは不幸中の幸い。
ラン仲間が待っている前夜祭には少し遅れてしまうけれど、Expo終了時刻(20:00)には十分間に合う。
もしも、キャンセル待ちがとれず、当初の便(羽田15:30発)になっていたら…それで、この事態に遭遇していたら…きっと間に合わなかったかもしれないので、そう考えると、ちょっとホッとした。
後続の便は、函館空港着陸こそなかったものの、大幅に乱れていたようで、それに伴い…。
本日(26日)の北海道マラソン2017 受付終了時間は20時を予定しておりましたが、交通遅延の影響などを鑑み、時間を延長することを決定いたしました。場所は大通公園西7丁目で変更ありません。受付終了時間については状況次第で最終決定します。
— 北海道マラソン (@HKDM2017) 2017年8月26日
北海道マラソン2017の受け付けはこの後「22:30」で終了いたします。
— 北海道マラソン (@HKDM2017) 2017年8月26日
場所は「大通公園西7丁目 総合案内」です。
※大会当日の受け付けは一切行いません
なんと、北海道マラソンの受付が22:30まで延長(!)されたようだ。
主催者側の判断と、ボランティアの方々のご苦労に、心から感謝したい。
離陸後、どす黒い積乱雲のある場所を通過。「この雲のせいで…」と思うと、僕は本当に恨めしかった。
ただ、雲の向こうには虹も見えて、救いを感じる情景だった。
無事、新千歳空港に到着。
僕の心も少しだけ落ち着いた。今回、JALには翻弄させられたけれど、「まぁ、ブログのネタにもなるし、悪くなかったかもw」などと、暢気なことさえ考え始めていた。
しかし、JALの翻弄は、これで終わりじゃなかったのである。
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*1:一部で怒鳴っていた客はいたのかもしれないが、機内全般に影響するような迷惑行為はなかった。