夜の天空は、星たちの劇場だ。
ただ、肉眼で確認できるものは限られていて、それらが出てくる時間も毎日異なる。でも、だからこそ天体観察は面白い。
夜空において、最も大きく見える星は、月。
月は、《満ち欠け》という素晴らしい演出で、さらに心をときめかせてくれる。
下弦の月から新月に至るまでの期間は、夜明け前の天空に輝き、日ごとに欠けていく。
その切なさ、儚さを、僕は心から愛している。
だから、この期間の月は、大事な夜明け前ランの相棒なのだ。
今年、僕は、新年の走り初めで月に出会った。
この時は、月とともに金星も見られる筈だったのだけれど、厚い雲に阻まれて、見ることができなかった。
しかし、僕はそのリベンジを狙っていた。
この年始期間は、ずっと、月と金星、そして、木星とのコラボレーションが楽しめる筈だったからである。
今回、月が新月となるのは1月6日。
だから、その前日までは、明け方の空に月は確認できる、筈。
ということで、僕が選んだのは1月4日。
天候は、雲ひとつない快晴で、天体コラボを観察するには、申し分のない状況だった。
ただ、僕は、その観賞場所を選ぶ必要があった。
この日、東京における月の出は午前5:00。かなり遅い時刻だ。
日の出も、6:51と遅いが、6:00を過ぎるとだんだん明るくなってきてしまうから、月と天体のコラボレーションを堪能ならば、5:00からの1時間が勝負。
月の位置は低いため、ロードなどで撮影しようとすると、ビルの影などに隠れてしまう可能性があるし、街灯の映り込みもある。
こういう時に、最も頼りになる撮影場所がある。
そう、河川敷だ。
河川敷から空を見上げる場合、視界を遮るものがないし、街灯もない。まさに、夜明け前の天体コラボを見るには、もってこいの場所なのである。
ということで…。僕は、やおら荒川河川敷に繰り出すことにした。
もちろん、ただ空を撮影するだけではつまらないため、もちろん、ランニングスタイルで、だ。
午前5時。
荒川河川敷に佇んで、空を見上げると、僕の思惑通り、天体では、星たちのコラボレーションが展開されていた。
有明月の近くには、木星が寄り添い、その上空には、明けの明星、金星。
この日はとても寒くて、手もかじかみまくっていたのだけれど、一瞬僕は、それを忘れて、シャッターを切り続けた。
3つの星たちに癒やされながら、しばらく走って行くと…。
情景が、だんだん赤くなってきた。天空の主役交代が近づいている時刻だ。
明るくなるにつれ、木星は見えなくなり、次いで金星も、太陽の光に埋もれてしまう。
しかし、月だけはなんとか頑張っていて…。
か弱い細さになりながらも、朝焼けとコラボレーションしている。
スカイツリーも美しく、まるで影絵のような情景。僕は、しばし見惚れてしまった。
ここからしばらく走って引き返し、のんびり走っていた頃、朝の主役が登場した。
河川敷で迎える日の出。いやはや強烈な光だ。
ほんの1時間前まで、河川敷の道は、ヘッドライトをつけないと何も見えなかったというのに…。
こんなに長い影を作ってくれたw
天体コラボをたっぷり楽しんだ後、朝の爽やかな日差しも堪能できる。
だから、河川敷の夜明けランは最高だ。