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4冠はゼロ。3冠は4作品。各社年間ミステリベスト1(国内編)を整理してみた!

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この本だけは、絶対に読んでおかなければ…と、思っていた。

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屍人荘の殺人

何しろ、本の表紙にかけられているオビのキャッチコピーが、あまりにも魅力的だった。


「史上初、デビュー作にして3冠!」

「第1位」

という文字を見てしまったら、ミステリファンの端くれとしては、見逃すわけにいかない。

実際、発売直後から大きく話題になっており、大傑作だという評判だったから、尚更期待は高まった。

僕は、今年の抱負で、「毎月、長編小説1冊とロードショー1本を楽しむ。」ということも上げていたので、そういった意味でも、この本は読まなければ…と思った。

ということで、年始早々から読み始め、あまりの面白さに、あっという間に読了。

「さぁ、その感想を伝えよう!」と、思っていたのだけれど、まず、その前にどうしても書いておかなければいけないことがあることに気がついた。

この本、「屍人荘の殺人」を購入する前から感じていた、《3冠に関する違和感》だ。

この本が3冠であることに、文句があるわけではない。

読了後だから声を大にして言いたいが、もちろん3冠に値する作品だし、過去の名作ミステリと比較しても、かなり上位の作品であると思う。 

今回僕が感じたのは、「いったい何を指して3冠と言っているのか?」ということだった。

3冠の証として、この本のオビに表記されているものは…

  • 「このミステリーがすごい!」(宝島社)
  • 「週刊文春 ミステリーベスト10」(文藝春秋)
  • 「本格ミステリベスト10」(原書房)

この3つ。

これらの国内ベスト10部門で、全て1位を取得したので、《3冠》ということになる。

どれも伝統あるミステリベストの賞であり、それらを同時に受賞したのだから、もちろん、間違いなく三冠。

しかし、年間ミステリベストとしては、大きなものがもうひとつある。

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「ミステリが読みたい!2018年版」特集掲載:ミステリマガジン 2018年 01 月号

「ミステリが読みたい!」だ。

こちらは2007年から始まったものであり、他3社に比べてかなりスタートは遅いが、ミステリの老舗である早川書房が主宰ということで、注目度は高い。

2014年、2015年は、米澤穂信の当たり年となり、「満願」「王とサーカス」で、2年連続ミステリ三冠を受賞した。

そう、この時の3冠は、「このミス」「週刊文春」「ミステリが読みたい!」の3冠だったのである。

だから、同じ3冠であっても、米澤穂信の2年連続3冠と、今回、「屍人荘の殺人」の3冠ではちょっと内容が異なるのだ。

と…。

文章の説明だけではちょっとわかりにくいと思われるため、各社の年間ミステリベストを整理してみることにした。

今回を含め、過去4回しかない3冠受賞作赤字で、これまで頻繁にある2冠受賞作青字で表記した。

  宝島社
「このミステリーがすごい!」

文藝春秋
「週刊文春ミステリーベスト10」

早川書房
「ミステリが読みたい」
原書房
「本格ミステリ・ベスト10」
2000 奇術探偵曾我佳城全集
(泡坂妻夫)
脳男
(首藤瓜於)
  奇術探偵曾我佳城全集
(泡坂妻夫)
2001

模倣犯
(宮部みゆき)

模倣犯

(宮部みゆき)

  ミステリ・オペラ
(山田正紀)
2002 半落ち(横山秀夫) 半落ち(横山秀夫)   オイディプス症候群
(笠井潔)
2003 葉桜の季節に君を想うということ
(歌野晶午)
クライマーズ・ハイ(横山秀夫)   葉桜の季節に君を想うということ
(歌野晶午)
2004 生首に聞いてみろ
(法月綸太郎)
犯人に告ぐ(雫井脩介)   生首に聞いてみろ
(法月綸太郎)
2005 疑者Xの献身
(東野圭吾)
容疑者Xの献身
(東野圭吾)
  容疑者Xの献身
(東野圭吾)
2006 独白するユニバーサル横メルカトル
(平山夢明)

名もなき毒

(宮部みゆき)

 

乱鴉の島

(有栖川有栖)

2007

警官の血

(佐々木譲)

女王国の城

(有栖川有栖)

楽園

(宮部みゆき)

女王国の城

(有栖川有栖)

2008

ゴールデンスランバー

(伊坂幸太郎)

告白

(湊かなえ)

ゴールデンスランバー

(伊坂幸太郎)

山魔の如き嗤うもの

(三津田信三)

2009

新参者

(東野圭吾)

新参者

(東野圭吾)

造花の蜜

(連城三紀彦)

密室殺人ゲーム2.0

(歌野晶午)

2010

悪の教典

(貴志祐介)

悪の教典

(貴志祐介)

Another

(綾辻行人)

隻眼の少女

(麻耶雄嵩)

2011

ジェノサイド

(高野和明)

ジェノサイド

(高野和明)

折れた竜骨

(米澤穂信)

折れた竜骨

(米澤穂信)

2012

64(ロクヨン)

(横山秀夫)

64(ロクヨン)

(横山秀夫)

幽女の如き怨むもの

(三津田信三)

キングを探せ

(法月綸太郎)

2013

ノックス・マシン

(法月綸太郎)

教場

(長岡弘樹)

ノックス・マシン

(法月綸太郎) 

貴族探偵対女探偵

(麻耶雄嵩)

2014

満願

(米澤穂信)

満願

(米澤穂信)

満願

(米澤穂信) 

さよなら神様

(麻耶雄嵩)

2015

王とサーカス

(米澤穂信)

王とサーカス

(米澤穂信)

王とサーカス

(米澤穂信) 

ミステリー・アリーナ

(深水黎一郎)

2016

涙香迷宮

(竹本健治)

罪の声

(塩田武士)

真実の10メートル手前

(米澤穂信)

聖女の毒杯 
(井上真偽)
2017

屍人荘の殺人

(今村昌弘)

屍人荘の殺人

(今村昌弘)

機龍警察 狼眼殺手

(月村了衛)

屍人荘の殺人

(今村昌弘)

この結果をあらためて眺めてみると、本当に惜しいなぁと思う。

4社ミステリベストのうち、原書房の「本格ミステリ・ベスト10」は、他3社と若干傾向が異なっており、近年は、他社と受賞作が重ならない傾向になっていた。

2年連続3冠を受賞した米澤穂信も、「本格」だけは逃して、4冠をとれなかったのだ。

今回、「屍人荘の殺人」は、その「本格」でも1位を獲得していながら、「ミステリが読みたい!」で1位を逃したのは、本当に痛かった。

いや。1位を逃した…どころではない。

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ベスト10にだって入っていないのだ。これは少し変ではないか。

掲載媒体が違うので、ある程度順位が異なるのは当然とも言えるけれど、選者は結構重なっているので、上位陣は同じようなものになることが多い。

ならば、なぜ、入らなかったのか。

その理由は、これだ。

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対象作品の選定期間。

「ミステリが読みたい!」は、他媒体よりも発表が早く、そのため、対象作品の期間が1ヶ月程度異なる。

2017年ミステリベストのランキング対象作品は、「2016年10月1日~2017年9月30日」で…。

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「屍人荘の殺人」奥付の初版日付は、10月13日。

ということで、選定対象期間外(!)になってしまうのである。

2018年には対象となるため、1年遅れで「4冠」という可能性もなくはないが、今更感が伴うから、おそらくそれは難しいだろう。

あぁ、あと1ヶ月早く発売されていれば、十分4冠をとれる作品だったと思うのになぁ…。

実に惜しい。

このミステリーがすごい! 2018年版

このミステリーがすごい! 2018年版

 

 


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