埼京線、十条駅。
池袋から2駅目。
ちょっとマイナーなイメージがあるけれど、駅を出るとすぐ、都内でも有数の大商店街を有していて、商店街マニア(?)には、有名な駅だ。
その名も十条銀座商店街。
そんな商店街の真ん中に、僕が通い始めた内田治療院は存在している。
座骨神経痛治療のため、僕は、ここで鍼(はり)治療を始めたのだ。
アスリートたち御用達の治療院であり、その鍼は、とっても効くけどメチャメチャ痛いことで有名。
ただ、僕が初回行った時の印象は、「思ったほど痛くない」というものだった。
今回は、2回目の治療ということもあり、僕はちょっと油断していた。初回で我慢できたのだから、2回目は楽勝だろうと思っていたのだ。
しかし…。それが大甘だったことを、僕はすぐに思い知った。
治療開始10分後、僕は猛烈な痛みに悶絶させられたからである。
痛い、痛いーっ。うぉーっ。いたたたた。
なんでこんなに痛いんだ、と思うぐらい、今回はつらかった。
僕はちょっと涙を流しながら、先生に、なんで今回は痛いんですかと尋ねたところ、
「前回は、座骨の周りが凝り固まり過ぎていて、鍼を打てる状態ではなかったです。今回は、何とか打てるようになりましたので、一番固いところに打っています。」
と、淡々と告げられた。
重ねて、「もしも耐えられないようでしたら止めます」的なことを言われたので、僕は、「いえ、続けてください」と伝えた。
この痛さは、あくまで一瞬の痛み。それで、長い間苦しんできた座骨神経痛が少しでも和らぐのであれば、断る理由がないからだ。
それからしばらく、何度か姿勢を変えながら、僕の苦悶は続いた。
とっても長い、長い時間…のように感じたが、終わってみたら、1時間しか経っていなかった。
治療後、先生に「座骨のところを触ってみてください」と言われ、僕はちょっと驚いた。
ちょっと柔らかくなっているじゃないか!
つい1時間前、この治療を受ける前の状態とは明らかに違っていることが感じられた。やっぱり、あの痛みはダテじゃなかったのだ。
僕は、その旨を先生に告げると、「これまでは、座骨周りの筋肉が、テニスボールぐらいの固まりになっていたんですが、今回、ゴルフボールぐらいにはなったかと思います。」という返答があった。
治療中の会話によると、過去最強クラスの固まりだったようだから、相当念入りに鍼を打ってくれたようだ。痛いのも納得。
加えて、先生からは、「東京マラソンまで、あと1ヶ月ぐらいですよね。間に合うように治療しますから」という力強い言葉もいただいた。
僕は、明らかに、鍼の効果が出ている(と思う)ことに大いに喜び、先生を信じて続けていこうと思った。
治療院の扉を出て、僕は、気持ちが大いに軽くなった。
この日は夜だったので、時はディナータイム。お腹も空いていたから、自分に「鍼の激痛を我慢したご褒美」を与えてあげることにした。
僕にとってのご褒美と言えば、もちろんアレに決まっているので、話は簡単だった。
…というより、僕はもともと決めていたのだ。
目的地は、十条銀座商店街の中、治療院から、わずか徒歩1分で行ける店。
これまで何度も十条は行ったことがあるのに、なぜかチェック漏れになっていた店。
治療のついでに訪れるには、もってこいのシチュエーションではないか。
僕は、迷わずその店の扉を開いた。