ひとときも、目が離せなかった。
夕食の後、いつものように「NHK WORLD TV」をつらつらと眺めていたら、ふと始まった番組に、僕は、思わず釘付けになってしまった。
「NHK WORLD TV」は、僕にとって、英語に慣れるための放送、という位置づけで、いつもは、食事時などに「ながら」見するのが常。
NEWSなどを中心に見ることが多かったが、まだまだ、うまく聞き取れなかったり、聞こえても理解できない単語が多いため、これまで、あまり真剣に見ることはなかった。
Bluetoothヘッドホン経由で、音だけを聞き流していたりすることも多かったのだ。
しかし、この番組は、違った。
スタートしてすぐ、「ランニング」という言葉が聞こえてきたので、ランナーの話なのかと思い、画面に目を向けて見たら、実に興味深い内容が飛び込んできたからである。
番組名は、「Running in God's Territory: Patagonia's Extreme Trail Race」
これがとにかく素晴らしかった。番組は全編英語だったのだけれど、トレイルランに関するドキュメンタリーなので、単語がぐいぐい頭に流れ込んできた。
あとで調べてみたところ、これは、NHKスペシャルで放映された番組の英訳版だったようだ。
僕は、この番組を見逃していたので、今回、英語版で見ることができ、本当によかった。
世界一過酷なトレイルレースに挑んだ、日本トレイル界の第一人者、鏑木毅(かぶらきつよし)選手。
そのドキュメンタリー内容が、あまりに素晴らしくて、僕はテレビの画面を見ながら、何度も、何度も、唸った。
そのコースの過酷さは、想像を絶していた。他ならぬ鏑木選手をして、「神の領域(God's Territory)」と言わしめるだけの、凄まじいコース。
しかし。見事に完走。それも、2着!だ。何という精神力だろう。
鏑木毅選手が、このレースに臨んだのは、47歳。いかに日本のトップアスリートとはいえ、決して若くはない。しかし、そんな年齢のことなど、吹き飛ばしてしまうような体力、精神力。
いやはや、本当に素晴らしい。
この言葉を聞いた時、僕は、感動で胸がいっぱいになった。
この番組を見ていて驚いたのは、鏑木選手の凄さだけではない。
このレースには、50歳を過ぎてからトレイルランニングに目覚め、59歳で臨んだ選手も出場していたのだが、なんと、見事に完走しているのだ!
僕は、昨日のエントリーで、自分が「劣化」しているのは、歳のせいかもしれないと嘆いたが、そんな自分が馬鹿に思えてきた。
歳なんて関係ない。僕には、単に努力と精神力が足りないだけ、だ。
世の中には、これほど過酷なトレイルレースがあるというのに、平坦で安全なロードを走る僕は、何を嘆くことがあるんだろう。
もちろん、トレイルとロードでは、レースの性格が違うし、そもそも世界のトップアスリートたちと、自分を比べること自体おこがましい。
しかし、大きな刺激をもらったことは確かだ。
僕も、もう少し、老体にムチ打って頑張らないとなぁ…と、強く思った。