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革新企画が続くミステリマガジン、追うSFマガジン

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鬼太郎の表紙は、流石に目立つ。


「ミステリマガジン」(早川書房)2011年7月号

最近のミステリマガジンにおける「翔びっぷり」は、堂に入ってる気がする。
1月号では「相棒」特集、6月号では「名探偵コナン」特集。そして今回はゲゲゲの鬼太郎。鬼太郎はミステリだったのか。知らなかった。実に革新的だ。
何が上手いと言って、毎年恒例の「幻想と怪奇」企画に合わせてくるところが上手い。確かに、ミステリというには無理があるかもしれないが、「怪奇」であることは間違いないからだ。そしてそれは、いみじくも特集コメントで解説されていた。

『ゲゲゲの女房』によれば、水木しげる氏はハヤカワミステリを買い集め、熱心に読んでいたという。時代も時代、海外ミステリが紹介され出した頃、漫画界でもミステリ趣向の漫画の需要が高まっていた。今号ではミステリマガジンならではの切り口で、幻想と怪奇の観点から水木作品を照らし出し、水木漫画と海外ミステリに共通する魅力の秘密にぐぐぐと迫る。

なるほど。そういうことだったのか。この論拠に基づく企画ならば全く無理がない。
水木しげる氏公認企画であることは、表紙イラストレーションから明らかだけれど、さらに、珠玉の「巻頭言」まで掲載。田辺青蛙、三津田信三、香月日輪各氏による「水木しげる先生へのファンレター」あり、資料と研究コーナーでは、芦辺拓セレクト水木漫画、ミステリ的水木作品ブックガイドあり、と、水木しげるファンにはたまらない企画になっている。
水木氏と直接の関係はないけれど、海外短編も充実。ヘンリイ・カットナー、チャード・マシスン、H・G・ウエルズ、ウィリアム・ホープ・ホジスンというビッグネームが顔を揃え、まさに「幻想と怪奇」号にふさわしい特集だ。ミステリファンは必携だろう。
革新路線を突き進むミステリマガジンに対して、今月のSFマガジンは王道を主張した。


「SFマガジン」(早川書房)2011年7月号

実にシンプルな表紙デザインだけれど、インパクトは絶大だ。
この特集では、伊藤計劃氏本人の作品が登場することはないけれど、氏が早逝した2009年以降の日本SF界を概観し、2010年代における方向性を探った、まさにSFマガジンらしい特集となっている。
圧巻は、小島秀夫×大森 望×矢野健二×塩澤快浩によるトークショー「いかにして伊藤計劃は作家となったか」の再録で、あらためて、SF界における伊藤計劃という存在の大きさと、失ってしまったものの重さを感じる。
小説特集こそないが、インタビューやエッセイなどに、上田早夕里、冲方 丁、小川一水、長谷敏司といった「旬」の作家たちが顔を揃え、まさに、「伊藤計劃以後」の名にふさわしい特集となっている。その他、評論なども満載だ。
革新道を突き進むミステリマガジンに対して、SFマガジンの王道ぶりは好対照。先月号の新海誠特集には少し驚いたけれど、それでも、パオロ・バチガルピ特集を併存させることでバランスをとっていたから、今後も「堅い」路線を行くのかなぁと思いきや…。
僕は、次号予告を見て驚愕した。

えっ…。えーーっ?初音ミク?
まぁ、確かに「SF的」と言えなくもないけれど、まさかあのSFマガジン誌が大特集を組むとは。いやはやこれは驚いた。山本弘氏や野尻抱介氏によるトリビュート(?)短編まで掲載されるようだから、実に画期的。今月号とは打って変わったものになるはずの表紙デザインにも注目だ。
僕のようなオールドSFファンにとっては、戸惑いを感じる部分も多いのだけれど、これも時代の流れなのだろうなぁ…。


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