餃子ランナーは電子機器の夢を見るか?

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違和感を感じなかった「HACHI 約束の犬」

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8月8日公開。なんと上映スクリーンまで8番だった。ハチ公の物語ということを、徹底的に意識した、「8」へのこだわり*1に敬服。

実を言うと、見るまでは若干不安があった。渋谷駅のハチ公物語は、あまりにも有名だ。細部まではわからないにしても、そのおおまかな粗筋は、悲劇的な結末まで含めて、誰もがよく知っている。
それが、アメリカ郊外の、名もないベッドリッジ駅などというところを舞台にリメイクされても、違和感ありまくりじゃないかと思った。
しかし、それは僕の誤解だった。
ハチが日本からアメリカに届くまでのシーンでは、いくつか腑に落ちない点があったものの、本筋に入ってからは、それも気にならなくなった。アメリカ郊外の駅前で、秋田犬がじっとただ主人を待つという情景に危惧した違和感は、結局僕の杞憂だった。
全編を通して流れるのは、犬と人間との深い交流の絆だ。特に、主演のリチャード・ギアが素晴らしい。実生活でも犬好きということらしいけれど、その愛情が画面の端々から溢れ出てくる。
妻役のジョーン・アレンがこれまた光る。当初は、犬を飼うことに反対していたのだけれど、夫や娘の思いを汲み取りながら、抑えた演技で、ハチへの理解を深めていく過程が見事。娘、娘婿、駅員、ホットドッグ売りに至るまで、ハチを巡る人たちは、皆、愛情に溢れているけれど、それがベタベタしたものになっていないというのも好印象。
所々に、ハチから見た光景が、モノクロの画像で織り込まれる。これが実にいい。位置関係や、角度も含めて、まさに、ハチの視点そのもの。
ハチは犬だから、言葉を発することはできないけれど、自身が見つめている「世界」であるモノクロの映像が、言葉の代わりに、その思いを代弁しているような気がする。その時々で、ハチが見つめているもの、感じているものが、モノクロの画面に反映されているからだ。モノクロの世界に、リチャード・ギアの表情が大写しになるたび、ハチへの深い信頼や愛情が、僕の心に大きく響いた。
これ以上のストーリーは、くどくど書くまい。
日米という舞台の違いこそあれ、メインのストーリーとしては、実話をなぞっているため、それほど大きな意外性はない。ドラマチックな脚色を期待していた人にとっては、物足りなさを感じる可能性もある。
ただ、丁寧に作られた作品であることは間違いなく、犬好きであれば、きっとたまらない筈だ。一晩経った今でも、主演のリチャード・ギアが呼び続けていた、「ハチーッ」の声は、僕の耳に残っている。佳作。

*1:8つ以上のスクリーンがある映画館は、それほど多くない筈だから、スクリーンの件はたまたまかもしれないけれど。


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